1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10670099
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
奈佐 吉久 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (10237571)
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Keywords | 心不全 / サイトカイン / 心機能 / ノルエピネフリン / エンドセリン / ACE 阻害薬 |
Research Abstract |
現在,先進国における最も重要な医療問題で,今後難病としてより有効な薬物治療手段の確立が急務であるのは心不全である.本研究の目的は,ACE阻害薬など心不全治療薬として位置づけられてきた薬物が果してどの様なメカニズムで心不全症状の悪化を抑えるのか,特に心不全の発症・進展に伴うサイトカインの変化に対してどの様な影響を示すのか,という点を明らかとすることである. 本研究では,ラットの心筋梗塞後心不全モデルを作製した.このモデルでは,冠動脈結紮後左心室拡張末期圧は術後早期に上昇したが,心拍出量は1-4週目まではsham(偽手術)群とほぼ同値を示し,術後6-8週目以後に低拍出性の心不全症状を示した.残存左心室や右心室重量は術後2週目までは変化を認めず,4週目以後心肥大の様相を呈した. 神経体液性因子の術後変化では,血中norepinephrine量は全身血管抵抗が有意に上昇した時と同じ時期である術後6-8週目で有意な上昇を示した.さらに血中および残存心筋組織中のendothelin-1,ANP,BNP含量は,術後1週目より増加が認められ,代償機能が破綻する術後6-8週目で最も高値を示した.慢性心不全治療効果を有するACE阻害薬を術後2週目より,あるいはneutral endopeptidase 阻害薬を術後1週目より投与したところ,これら神経体液性因子の増加が顕著に抑制され,心機能の低下も抑えられた. 血中および心筋組織中サイトカイン(IL-1β,IL-6およびTNF-α)はいずれも冠状動脈結紮早期(12-24hr)から増加傾向が認められた.これは心筋梗塞部位の炎症反応に伴ってリンパ球など白血球の浸潤が起こった結果と解されるが,心不全進行の原因との関連性はまだ不明である.上述したACE阻害薬やNEP阻害薬はこのような炎症性サイトカイン類が一度上昇した後に投与を開始しているため,今後は被験薬物の投与時期を変えてinvivoでの心機能との関連やin vitro での薬物評価系を確立していく予定である.
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