1998 Fiscal Year Annual Research Report
肥大心の不全心への移行-肥大心における一過性虚血における心筋アポトーシス
Project/Area Number |
10670626
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
磯山 正玄 東北大学, 医学部附属病院, 講師 (10133943)
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Keywords | 心筋 / 心肥大 / 虚血 / アポトーシス / Bax蛋白 / 心不全 |
Research Abstract |
心臓は高血圧などの負荷に対して肥大して対応する(代償期)。更に負荷が持続するとやがて不全に至る(不全期)。この不全に移行するメカニズムについては種々の仮説が提唱された。また、従来より、肥大心は冠予備能が低下しており虚血に陥りやすいことが知られている。本研究者は、この不全への移行は頻回の虚血によって心筋細胞のアポトーシスが誘導されるからではないかとの仮説をたて、これを実験的に検討した。方法 ラットを麻酔開胸し、上行大動脈を狭窄した(肥大心群,n=18)。対照群では、大動脈狭窄のみを除いた手術を加えた(n=18)。4週後再度、麻酔開胸し、左冠動脈にナイロン糸をかけスネアを作成した。それにより10分間冠動脈閉塞後、解放して閉胸した。0,3,6時間後に、スネアを心臓につけたまま摘出した。そのスネアを結紮した後、色素を大動脈より注入し、虚血、非虚血領域を区別した。アポトーシスはTUNEL法にて、Bax蛋白の発現は免疫組織染色法にて検出した。結果 肥大心群の左心室重量/体重比(mg/g)は3.1±0.4で、対照群の2.4±0.2に比し、有意に高値であった(p<0.05)。冠動脈の閉塞後、0時間では両群ともにアポトーシスを生じている細胞は検出されなかった。3および6時間後では、肥大心群において、対照群に比し有意にアポトーシス細胞の増加が認められた(0.16±0.04vs0.04±0.01%(肥大心群vs対照群)、3時間後,p<0.05;0.15±0.02vs0.01±0.01%、6時間後、p<0.05)。興味あることに、Bax蛋白の発現は虚血を与える前、また、虚血後いずれの時間においても肥大心群の方が対照群よりも発現の低下が認められた。結論肥大心筋細胞では虚血によりアポトーシスを生じやすい。また、アポトーシスを誘導するとされるBax蛋白の発現は肥大心においてむしろ抑制されており、この蛋白の肥大心筋のアポトーシス誘導の過程への関わりは否定的である。
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