1998 Fiscal Year Annual Research Report
電子スピン共鳴を用いた放射線防護剤としてのラジカルスカベンジャーの基礎的検討
Project/Area Number |
10670844
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
邵 啓全 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (20283567)
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Keywords | 電子スピン共鳴装置(ESR) / ニトロキシドラジカル / マウス肺 / 放射線障害 / ラジカルスカベンジャー |
Research Abstract |
胸郭照射後マウス肺内における外因性ニトロキシドラジカル還元能の変化をL-バンド電子スピン共鳴装置(以下ESR)を用いて観測した。ニトロキシドラジカルとしてはhydroxy-2,2,6,6-tetrametyl-piperidine-N-Oxyl(hydroxy-TEMPO)を用い、マウスを屠殺後、経気管的に肺内に直接投与する方法を採った。 1. 照射量と還元能との関係 (1) 1Gy、2Gy、3Gy、5Gy、7.5Gy、10Gyの6段階の照射群に分けて1回照射を行い、直後にESR測定した結果、1Gyから5Gyまでは線量の増加に伴って還元能は低下するが、5Gyから10Gyにかけては還元能に有意な変化は認められなかった。このことから、マウス肺内の還元能、すなわち抗酸化能には照射の影響を受ける系と受けない系の少なくとも二系統あることが推察された。 (2) 2Gy/日×5日間、3.3Gy/日×3日間、10Gy/日×1日間の3通りの照射群において経時的(4週間)に還元能を測定した結果、前2群(分割照射群)においては一時的な還元能低下からの回復が維持されたが、後1群(1回照射群)においては還元能の再度の低下が認められた。このことから、分割照射が還元能を維持するのに、しいては放射線障害の予防、軽減に有用であることが改めて確認された。 2. ラジカルスカベンジャーと還元能との関係 ラジカルスカベンジャーとしてアスコルビン酸、α-トコフェロール、グルタチオンを用い、それぞれを静注投与した3群において照射後還元能を測定した結果、アスコルビン酸投与群にのみ還元能低下抑制が認められた。さらに、その還元能はアスコルビン酸投与量に比例して増加した。このことから、アスコルビン酸が放射線障害の有効な防護剤になり得るという可能性が示唆された。
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