1999 Fiscal Year Annual Research Report
精神分裂病における左右大脳半球間の連絡異常についての電気生理学的研究
Project/Area Number |
10670887
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Research Institution | AKITA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
新山 喜嗣 秋田大学, 医療技術短期大学部, 教授 (90208116)
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Keywords | 経頭蓋的磁気刺激 / 能梁反応 / 精神分裂病 / 大脳半球 / 半球間連絡 |
Research Abstract |
前年度までの研究から、経頭蓋的磁気刺激を用いた脳梁反応を再現性が高く記録できるのは、上側頭部付近を8の字コイルで刺激をした場合であることが示された。この成績をふまえて、本年度は刺激方法をこの方法に統一して健康被験者15名と精神分裂病患者6名を対象として脳梁反応を記録した。(精神分裂病患者の対象者が少数であるのは、磁気刺激方を用いた研究に本疾患の患者が被験者として参加する場合には、患者本人の同意能力を充分に重視する必要があることが本研究機関の倫理委員会で示され、対象者を厳選した結果である。)脳梁反応は8の字コイルの直下の部位の半対側の大脳半球より、刺激からの頂点潜時が約15〜20msecの陽性の電位変化として記録された。左半球から右半球への連絡に関する脳梁反応の頂点潜時についても、また右半球から左半球への連絡に関する脳梁反応の頂点潜時についても、健康被験者と精神分裂病患者との間で統計学的な有意差を認めなかった。しかし、健康被験者15名の中で脳梁反応を左右両方向の連絡について記録ができた10名に関して、その中の全例において左半球から右半球への連絡に関する脳梁反応の頂点潜時が、その反対方向の脳梁反応の頂点潜時より短かった。これに対し、精神分裂病患者6名の中で脳梁反応を左右両方向の連絡についても記録ができた5名に関して、その中の4例において健康被験者とは逆に右半球から左半球への連絡に関する脳梁反応の頂点潜時が、その反対方向の脳梁反応の頂点潜時よりも短かった。このことから、健康者では左右の大脳半球間の情報連絡の速度の非対称性が存在しており、一方、精神分裂患者ではそのような非対称性が保たれていないか、もしくは、逆転している可能性があると考えられた。このような精神分裂病患者における大脳半球間の情報連絡の異常が、本疾患の陽性症状を生起させることに関連している可能性があると推測された。
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