Research Abstract |
慢性動脈閉塞症による虚血下肢に対するニトログリセリン(NTG)の経皮的・直接投与の意義を明らかにするために,以下の検討を行った.対象・方法:1)9例に対し,レーザードップラー血流計プローブを両側足背に装着,一側にNTG軟膏(12mg)を投与し,120分間の皮膚血流,温度変化を記録した.2)皮膚血流の測定と同時に,投与開始後120分に投与下肢の大腿静脈血,上肢静脈血を採血し,NTG濃度を測定した.3)25例に対しNTGテープ(5mg)を下腿に投与し,トレッドミル歩行負荷(時速2.4km,距離100m,傾斜12%)を行い近赤外分光法により回復時間を測定し,下腿筋の酸素代謝を評価した.測定は各症例でNTG非投与,測定側投与,対側投与時に行った.結果:1)投与側で皮膚血流は投与前100.87±66.03BPUから後196.48±115.87BPU(P<0.01),皮膚温は30.54±1.87℃から34.97±1.49℃(P<0.001)と有意な上昇を見とめた.対側では皮膚温度31.95±0.98℃から34.18±1.23℃(P<0.05)と上昇を見とめたが,血流は前79.24±50.74BPU,後89.71±44.78BPUで有意な変化は見られなかった.2)NTG血中濃度は,投与側大腿静脈血中で23.55±27.46ng/ml,上肢静脈血中濃度は,0.399±0.224ng/mlで,両者に有意差を認めた(P<0.05).3)回復時間は投与前(4.26±2.60分)に比べ,測定側投与(3.65±2.06分)で,回復時間の短縮を認めた(P<0.05).また,対側投与(3.84±2.20分)でも,投与前に比べて,回復時間の短縮を認めた(P<0.05).測定側投与と,対側投与の回復時間の間には,有意差は認められなかった.結論:本法は,下肢慢性動脈閉塞症に対する有効な治療法である.レーザードップラー血流計による検討で,NTG投与側の皮膚血流に改善を認め,対側の皮膚血流には変化を認めず,NTGの患肢に対する直接的投与の意義が示された.
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