1998 Fiscal Year Annual Research Report
排卵・妊娠維持ほか各種産科婦人科学領域におけるG-CSFの動態に関する研究
Project/Area Number |
10671574
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
牧野田 知 金沢医科大学, 医学部, 教授 (80165688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井浦 俊彦 金沢医科大学, 医学部, 講師 (40202840)
金子 利朗 金沢医科大学, 医学部, 講師 (40224604)
吉田 勝彦 金沢医科大学, 医学部, 助手 (30220635)
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Keywords | 排卵(ovulation) / 顆粒状コロニー増殖因子(Granulocyte colony-stimulating factor : G-CSF) / サイトカイン(cytokine) / mRNA |
Research Abstract |
「排卵は炎症類似の現象である」とのEspeyの仮説(1980)、およびラット卵巣潅流実験系で白血球添加により排卵率が増加したという事象(Hellberg et al.,1991)を根拠として、本年度は排卵時におけるG-CSFの動態を中心に解析した。 1) 排卵前後における血清中サイトカイン濃度の変動 排卵日をday=0とし、排卵前後の期間をday:〜-11、day:-10〜-6、day:-5〜-1、day:0〜1、day:2〜5、day;6〜10、day:11〜、の7群に分け、これまでに排卵との関連が報告されているTNF一α、IL-1β、IL-6、GM-CSF、M-CSFおよびG-CSFの6種類の血清中サイトカイン濃度の変動を解析した。その結果、TNF-α、IL-1β、IL-6、GM-CSF、およびM-CSFでは、排卵前後の各期間を通じて有意な濃度変動は認められなかった。これに対しG-CSFでは、排卵前のday:-5〜-1の時期に濃度のピーク(40.12±2.02pg/ml)を認め、その前後の期間との間に有意な濃度差が認められ(day:-10〜-6;23.68±2.08,P<0.005、day:0〜1;28.56±2.09,P<0.05)、G-CSFが他のサイトカインに比べて、より排卵現象に.関与していることが示唆された。 2) 排卵直前での血清および卵胞液中サイトカイン濃度の比較 排卵直前における血清中と卵胞液中でのサイトカイン濃度の平均を算出し、濃度較差について比較を行った。TNF-α、IL-1β、GM-CSFでは卵胞液中濃度よりも血清中濃度のほうが高かったのに対し、M-CSF(血清中:卵胞液中=859.8±92.1;1239.8±91.2U/ml,P<0.05)、IL-6(2.33±0.30:3.96±0、25pg/ml,P<0.001)、G-CSF(30.71±3.55:73.75±5.51pg/ml,P<0.00001)では、卵胞液中で有意に高濃度であった。卵胞液中濃度の高かったM-CSF、IL-6、G-CSFでの卵胞液中濃度/血清中濃度比は、それぞれ1.44、1.69、2.40であり、この現象もG-CSFの排卵現象への関与を明らかにした。 3) 排卵直前顆粒膜細胞でのG-CSFmRNAの同定 ヒト卵胞内でG-CSFが産生されている可能性を調べるため、排卵直前に採取した顆粒膜細胞を材料にnested RT-PCR法を用いてG-CSF mRNA発現の有無を確認した。対象とした4症例の顆粒膜細胞検体全てからG-CSF mRNA由来のバンドが検出された。 以上の結果から、排卵に近い時期にG-CSFが卵胞内で産生され、排卵現象に密接に関連していることかはじめて明らかにされた。
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