1998 Fiscal Year Annual Research Report
口唇裂口蓋裂患者における上顎骨の振動動態に関する研究
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10671818
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
鈴木 るり 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (10226574)
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Keywords | モード解析 / 上顎骨 / 唇顎口蓋裂 / 伝達関数 / 共振周波数 / カーブフィット |
Research Abstract |
本研究では、モード解析の理論を応用し、上顎の歯に動的衝撃を加え、上顎骨内の振動の様相を明らかにすることを試みた。 まず、本実験系の再現性を確認するため、同一被験者に同日内に3回、さらに日を変えて3日、計9回の測定を行った。その結果、各側定点でので伝達関数は明瞭な一つのピークを持ち、その形状が非常に類似していた。また共振周波数は、535.1Hzから565.9Hzの範囲で、変動係数も0.03%から2.0%の範囲と生体を対象とした実験では極めて小さく、本実験系は十分な再現性を有すると考えられた。 そこで、健常成人12名(男性7名、女性5名、平均年齢25.9歳)を被験者とした。すべての被験者の伝達関数において、一つの明瞭なピークが見られ、同一被験者内では、側定点が違っても、伝達関数の形状は非常に類似していた。また、カーブフィットもすべての被験者において行うことが可能であった。カーブフィット後の共振周波数は546.7Hzから785.5Hzの間であり、各側定点での振幅は、前歯部で最大となり、側定点が後方になるにしたがって小さくなった。振動のアニメーションでは、上顎歯列は振動を受けた後、一周期内で、アーチが外側にふくらみ、内側にしぼむといった振動様相を呈した。 さらに、矯正治療が終了し、顎裂部に骨移植術を受けていない補綴処置開始前の左側唇顎口蓋裂患者男性2名(20歳および22歳)を被験者とした。口蓋裂患者においても、伝達関数は明瞭な一つのピークを示し、いずれの被験者においてもカーブフィットが可能であった。共振周波数は614.7Hzと597.9Hzであり、健常者の範囲内であった。振幅は健常者と同様後方になるほど小さくなったが、特にスモールセグメントで、小さな値を示した。また、振動のアニメーションも外側にふくらみ、内側にしぼむといった様相を呈したが、両セグメントの間に位相のずれが見られた。
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