1998 Fiscal Year Annual Research Report
血管肥厚に対する白血球接着阻害療法の有効性に関する基礎的研究
Project/Area Number |
10672151
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
滝口 祥令 徳島大学, 薬学研究科, 助教授 (40163349)
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Keywords | 血管内膜障害 / 血管内膜肥厚 / 白血球 / セレクチン / 細胞間接着 |
Research Abstract |
白血球は障害発生後初期に障害部位に浸潤し活性酸素や各種サイトカイン等を産生・分泌することにより炎症反応の中心的役割を担っている。血管内膜肥厚形成も内膜障害に起因する反応であり、その初期過程において白血球の関与が推察される。そこで、一連の白血球が関与する反応の開始点である白血球の血管壁への粘着、すなわち白血球-血管壁間の細胞接着の阻害に基ずく血管肥厚抑制の可能性を検討した。実験動物には正常ラットと内因性抗atherogenic因子であるVitaminE(VE)欠乏ラットを用い、PIT法にて大腿動脈に血管内膜障害を作成した。白血球接着阻害薬には白血球粘着の第一段階であるrollingに関与する接着分子セレクチンの阻害作用を有するfucoidan、IP_6を用いた。VE欠乏群では障害作成3週間後にみられる新生内膜面積は対照正常群に比べ有意に増加していたが、fucoidan(10mg/kg/day)及びIP_6(30mg/kg/day)投与(障害作成後6日間)により内膜肥厚が有意に抑制された。一方、対照正常群では両薬物投与による血管肥厚への有意な影響はみられなかった。障害作成24時間後の障害部位での活性化白血球の集積をMCLA発光にて測定した結果、両群ともに発光量の増加が認められ、内膜障害後の初期に障害部位に白血球が集積していることが認められた。また、その発光量は対照正常群に比べVE欠乏群で著名に増加しており、両薬物投与によりその増加が抑制された。なお、両薬物は本用量においてラット後肢足蹠カラゲニン浮腫モデルで同程度の有意な抑制作用を示した。以上、白血球粘着阻害によりVE欠乏時の血管肥厚増大が抑制されたことから、白血球の粘着およびそれに引き続く活性酸素やサイトカインの産生増加がVE欠乏時の血管肥厚増大に関与している可能性が示唆された。また、VE欠乏群で接着阻害薬の効果がより明らかにみられたことから、VE欠乏時に接着分子の発現が増大し、その結果肥厚形成が増大した可能性も示唆された。
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