Research Abstract |
衣服の着脱あるいは着替えに関する研究は,衣生活の自立の重要性が求められているなかで実態調査や事例的報告は多いものの,着脱動作の分析を行った研究は極めて少ない。着心地が良く,着脱しやすい衣服を設計し,着装するという観点から,こうした着脱の容易性を具体的に検討し,衣服の設計・構成レベルで改善方法を実現化することは,生活自立を維持する,あるいは支援する上で重要な役割をもつことが指摘されている。 着脱動作は,服種によって,はおる,かぶる,はく,とおす,引っ張るなどの単純動作から,ボタンかけはずし,ファスナー開閉,ベルトなどの留め具による細かい操作などを含んでいる。こうした動作を系統的に分析し,動作特性として明確にする事が着脱をスムーズに行えるように設計し,さらに着装時の基本的なステップをパターン化したり,手順を考慮するなど具体的な方法を見いだすことが重要課題であると考える。 本研究では,健常者の着脱動作が,どのような過程で行われているか,動作実態を明確にし,着脱を行う際の容易性を考察するなど,着脱を基本動作としての基礎的資料を得る目的から,下衣服の着脱の動作特性を明らかにするためにパンツ形態(ジーンズ3種,ジャージパンツ)4種の実験衣を用いて,健康な女子(20歳前後)被験者による着脱の動作実験を行い,同時に着用感および着脱しやすさに関する官能評価を実施した。動作は,ビデオカメラで撮影し動作過程,所要時間等を検討した。その結果,動作の所要時間は4種共に着衣>脱衣となり,ジーンズはジャージに比べ2倍以上の時間を要していることがわかった。着衣時の動作過程においてジーンズとジャージのはき方の違いが見られ,これまでの下衣服を用いた実験結果から,動作過程モデルを作成できた。パンツ形態のはき始め・脱ぎ始める足は,いずれにおいても使われる側が定まっていることが確認できた。
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