Research Abstract |
平成10年度からの継続研究として,本年度は前年度に実施した着脱動作の実験結果とこれまでの下衣服を用いた着脱動作の実験結果をもとに動作分析と着用感について検討した。被験者は,いずれも健康な若年層の成人女子である。 動作の分析は,まずビデオカメラで撮影した画像からビデオタイマを用いて時間を記録した。着衣および脱衣の所要時間を求めた。さらに動作の構成単位を主動作と補助動作として捉え,動作過程モデルとして類型化した。今回の対象衣服は,パンツ形態のジーンズパンツとトレーニングパンツ(ジャージパンツ)とした。研究計画当初は,スカートとパンツ形態ともに扱う予定であったが,スカートとパンツ形態で動作過程を比較したところ,異なるステップをたどるため本研究ではパンツ形態に焦点を絞り込んだ。動作特性としてファスナーの開閉,脚の出し入れについて観察を行った。着用感は,動作の終了直後に着脱したときの着用感として官能検査SD法の項目によって「非常に思う」から「思わない」単極尺度5段階で評価した。評価は動作,肌触り・風合いなどに関する20項目である。実験は,ジーンズのサイズ表示が29インチと30インチサイズ利用者の2グループで行った。29インチグループの表示サイズはウエスト63cm,ヒップ91cm,ジーンズのシルエット3タイプとトレパン計4タイプ,被験者ウェスト囲(平均64.2cm),29名である。30インチグループの表示サイズはウエスト66cm,ヒップ93cm,ジーンズのシルエット4タイプ,被験者ウェスト囲(平均66.7cm),30名である。 動作の所要時間について,パンツタイプと大腿部サイズ(体型)の二要因として分散分析を行った。その結果,29インチグループは,大腿部の回り寸法が小さい被験者群が他の被験者群よりも有意に着脱時間が短かった。これに対して,30インチグループでは,全般にすそ幅の狭いジーンズほど動作時間は長くなるが,最も狭いジーンズにおいて大腿部の回り寸法が大きい被験者群が他の被験者群よりも有意に着脱時間が長かった。1インチのサイズ差は,利用者にとってきつめにはくか,ゆるめにはくかの選択基準に関係していると思われる。 SD法による着用感評価について,各被験者グループで体型による評価の差を検討した結果,特に30インチグループにおいて,小さいサイズの被験者群が他の被験者群とは異なり,すべりがよい,心地よい,肌触りの良い,着慣れたなどの用語において評価値が高く,有意差が認められた。 以上,本研究の成果を報告書にまとめ,関連学会において発表予定である。
|