1999 Fiscal Year Annual Research Report
中国語系日本語学習者の聴解力と有声・無声破裂子音の弁別能力の調査・分析
Project/Area Number |
10680307
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山本 富美子 立命館大学, 法学部, 助教授 (50283049)
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Keywords | 中国語系日本語学習者 / 聴解力 / 有声・無声破裂音 / 日本語音声習得研究 / 北京語話者 / 上海語話者 / 母語干渉 / コミュニケーションスタイル |
Research Abstract |
中国語系学習者の日本語談話理解のための聴解力は、同程度の日本語能力で他の言語を母語とする学習者に比べて低い。その要因として、中国語の音韻干渉と中国の文化社会的規範が影響しているのではないかとの仮説たて、まず音韻干渉の有無について調査・分析を行った。その結果、母語に有声破裂音を持たない北京語話者は、特定の音声環境下にある破裂音の習得がほとんど進まず、有声破裂音をもつ上海方言話者に比較して日本語破裂音の習得が遅れることがわかった。また、音声談話理解のための聴解力も北京語グループは上海語グループより習得が遅く、北京語話者が大半を占める中国人学習者の聴解力における不振の1要因として、有声・無声破裂音の対立を持たない母語の音韻干渉が明らかに指摘された。 しかし、その一方で、両方言グループともに、各グループ内で個々の学習者間に破裂音の弁別能力の差異が見られ、その差違が談話理解のための聴解力にも深く影響を及ぼしていることも判明した。また、学習期間が同程度の同じ北京語話者でも、黒竜江省出身者より遼寧省出身者の方が習得が早く、環境が異なる教育機関の集団間でも大きな差違が見られた。このような同一母語内の学習者間の差違は、母語干渉では説明され得ない。一方、個々の学習者の言語生活や教育環境、所属集団の文化・社会的規制や規範などによって形成される、学習者のコミュニケーション・スタイルが日本語習得能力にも影響している傾向が見られ、この点について、今後研究を進めていくべき課題であることを提言した。
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