持続的環境利用システムとしての市場・政府・コモンズに関する比較研究

1998 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10680547
• Research Institution: Hiroshima University
• Principal Investigator: 松岡 俊二 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 助教授 (00211566)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 松本 礼史 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 助手 (50294608)
• Keywords: 持続的資源管理 / 資源配分システム / 日本林業 / コモンズ / 非営利セクター

Research Abstract

今年度は、日本の森林資源管理を対象とし、市場システム、政府システム、コモンズ・システムの比較研究を行った。
まず、日本の森林資源の状態と各システムで代表的な既存の管理主体がおかれている経営状態を分析した。その際、市場システムでは林家を、政府システムとしては国有林野事業を、コモンズ・システムとしては入会林野が近代化された形態である生産森林組合を対象とした。その結果、日本の森林管理システムは林業を中心としており、持続的管理が行われない森林資源の増加をもたらしていることが明らかとなった。
現行の森林資源管理システムでは森林管理の充実は望めないことから、新しい森林管理システムを構築することが必要である。このため本研究では、近年、進展してきたコモンズ型資源管理や非営利セクターに関する研究をふまえ、新しい森林管理システムとして地域共同体に基礎をおく現代的コモンズ型資源管理についても研究をおこなった。その結果、従来の木材生産という市場財の収穫のみを森林管理の目的とするのではなく、森林の公益的機能保持を目的とするために、木材市場の動向に左右されない森林の新しい価値付けを行っているボランティアの充実が必要であることが明らかとなった。
従来のE.Ostromらが行った伝統的なコモンズの存続条件に関する研究を発展させ、資源の状態と管理主体の状態をふまえて、非営利セクター(ボランティア)からの現代的コモンズの再生条件・再生過程に焦点をあてたことが今年度の研究成果である。今後、より詳細な現代的コモンズの条件を、実際の活動、主体間の関係から得ることが課題である。

Research Products

• [Publications] 松岡俊二・松本礼史: "持続的資源管理における市場・国家・コモンズ : 日本の森林資源を中心に" IDEC Research Paper Series. 1999・4. 1-40 (1999)
• [Publications] 渡里 司・松岡俊二: "水源林保全と持続的森林経営 : (財)広島県緑と水の森林公社の水源林保全活動を中心として" 水資源・環境研究. 第11号(印刷中). (1999)
• [Publications] 松岡俊二・河内幾帆: "ISO14000と日本の環境協力" 季刊中国総研. 2・2. 21-32 (1998)
• [Publications] Ikuho Kochi, Shunji Matsuoka, Reishi Matsumoto: "Economic Growth and Environmental Problem in Developing Countries : The Environmental Kuznets Curve Do Exist" IDEC Research Paper Series. 1999・1. 1-24 (1999)
• [Publications] 松岡俊二・松本礼史・河内幾帆: "途上国の経済成長と環境問題 : 環境クズネッツ曲線は成立するか" 環境科学会誌. 11・4. 349-362 (1998)
• [Publications] 河内幾帆・松岡俊二: "東アジアにおける社会的環境管理システムの形成と国際環境協力" 第9回国際開発学会全国大会講演論文集. 60-63 (1998)
• [Publications] 白川浩・松岡俊二: "住民参加型援助のシステムデザイン" 第9回国際開発学会全国大会論文集. 89-92 (1998)
• [Publications] 松岡俊二・松本礼史(分担): "アジアの環境問題" 東洋経済新報社, 307 (1998)
• [Publications] 山下彰一・松岡俊二他: "地方発の国際協力-ラジオ・アジア講座-" 広島大学生涯学習推進委員会, 143 (1998)