1999 Fiscal Year Annual Research Report
海岸砂丘における単独性カリバチをモデルとした保全生物学的研究
Project/Area Number |
10680556
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
遠藤 知二 神戸女学院大学, 人間科学部, 助教授 (60289030)
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Keywords | 海岸砂丘 / ベッコウバチ / コガネグモ / 中心場所採餌 / 保全生物学 / 空間分布 / 餌資源 / 単独性カリバチ |
Research Abstract |
キオビベッコウはコガネグモ科のクモを狩猟し、砂地に穴を掘って営巣する単独性のカリバチであり、河川敷などの生息場所破壊にともなって近年個体数が減少しているとみられている。京都府久美浜町箱石の海岸砂丘で現在も比較的高い密度を維持している個体群について、本種が中心場所採餌という採餌様式をもつことに着目して、本種個体群の維持を可能にする条件と局所的な餌密度の低下が他の生物群に及ぼす影響を検討した。平成10年度の調査結果で、ハチのナガコガネグモに対する狩猟が活発になるとともに、営巣場所近傍のクモ密度が急激に低下すること、クモの放逐実験から近傍で放逐した標識個体が多く狩猟されていることが明らかになった。本年度の調査でも、同様にクモ密度の空間勾配が生じていることが観察された。2年間の結果から、キオビベッコウによるナガコガネグモの狩猟数は、営巣場所近傍50mの範囲内に生息する利用可能なサイズに達したクモをすべて狩猟しつくすのに十分であることが判明した。したがって、営巣場所近傍のクモ個体群は、事実上シンク個体群といえる。また、本年度はナガコガネグモの餌となる昆虫への影響を調べた。その結果、ナガコガネグモはヨコバイ亜目や大型のバッタ目などの植食性昆虫を利用していることが特徴的であった。さらに、これらのクモ類が餌となる飛翔性昆虫の飛翔頻度に与えている影響を把握するため、クモの高密度域での除去実験を行ったところ、ハチ目(おもにツチバチ類)、チョウ目(おもにシジミチョウ類)の飛翔頻度が、クモも網も除去しない対照区や網を残してクモだけを除去した実験区に比べて増加した。このことから、クモの網の存在がこれらの昆虫に回避的な行動をとらせていることが示唆された。今後は、このような捕食者の非致死的効果の把握が重要になると思われる。
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