1999 Fiscal Year Annual Research Report
『イソップ寓話』の受容を視座とする明清寓言の思想史的研究
Project/Area Number |
10710005
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
佐藤 一好 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (30196224)
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Keywords | 『イソップ寓話』 / 陳春生 / 『東方伊朔』 / 『伊朔訳評』 / 中国寓言 / 『中西聞見録』 |
Research Abstract |
平成11年度は『東方伊朔(イソップ)』に対する研究を深めると同時に、『東方伊朔』と表裏一体の関係にある陳春生の別著『伊朔訳評』についての基礎的考察を行った。同書は、わが国では天理図書館に蔵されているが、その表紙には「上海美華書館発行、宣統元年十一月再版」とあり、再版本であることが明確である。しかし、『伊朔訳評』に言及する 戈宝権論文では、同書は宣統元年に上海協和書局から刊行されたことになっている。戈氏が初版・再版の別を明らかにしていないので確言することはできないが、氏が『東方伊朔』と『伊朔訳評』の緊密性を説く際に引用する文章は、天理図書館本の末尾に見える「新書広告」中の「五版東方伊朔」と「再版伊朔訳評」の宣伝文と一致している。従って、戈氏が見た『伊朔訳評』も再版本である可能性が高く、関西大学図書館に蔵されている『東方伊朔』の初版本(光緒32年)が実は上海美華書館の発行であることを考慮に入れれば、『伊朔訳評』を上海協和書局の発行とする戈氏の記述には問題があろう。その問題は同書が『東方伊朔』同様、キリスト教的性格を帯びている、という内容的な問題にも深く関わっているので、「陳春生『東方伊朔』研究序説」(『日本アジア言語文化研究』第6号)と題する拙稿の続篇として、近く公表を予定している。 なお、本年度はさらに『イソップ寓話』やラ・フォンテーヌの『寓話』を断片的に紹介する『中西聞見録』に対しても基礎的研究を行った。『中西聞見録』所収寓言については、すでに中村忠行「清末の寓話-『海国妙喩』をめぐって」(『天理大学学報』86輯)が興味深い考察を行っているが、氏が言及していない記事の中にも寓言文学史と思想史の境界線上で取り上げるべき記事が多いように思う。例えば、艾約瑟の手になる本格的なアリストテレス伝、すなわち「亜里斯多得里伝」(『中西聞見録』32号)等には注目すべきであろう。
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Research Products
(1 results)