1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710008
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
山極 伸之 佛教大学, 文学部, 助教授 (60268125)
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Keywords | 倹開八事 / 内宿 / 内煮 / 白煮 / 残食法 / 律蔵 / 淨 |
Research Abstract |
昨年度に引き続いて、律蔵関係資料の収集を行いながら、パーリ上座部のVinaya-pitaka(いわゆるパーリ律)と法蔵部の四分律を主たる対象として、そこに説かれている「学処(律規定)」の調査を行ない、データベース作成のための基礎的な整理作業を行った。パーリ律と四分律に関しては、基本的なデータ抽出をほぼ終えることが出来たと考えるが、平行して存在する他の律文献(五分律・十誦律・摩訶僧祇律・根本説一切有部律)に関する調査・整理については、与えられた時間の中で完了するにはいたらなかった。しかし、昨年度の報告にも示したように、研究の過程で明らかになった「淨」および「淨人」の問題に関しては、その重要性を再確認することがてき、この間題をめぐる研究の成果を「律規定の解禁をめぐる諸問題」と題して日本印度学仏教学会の学術大会(及び雑誌『印度学仏教学研究』)で公表した。そこでは、仏教教団がそれを取りまく社会的な状況の変化に応じて学処を随時改正・変更していく様子を明確化し、加えて「食」の受容をめぐる規制緩和の実態や問題点などを明らかにした。その結果、一般的に考えられているように、仏教教団が成立の当初から厳格主義(rigorism)を一貫して保とうとしてきたとは必ずしも考えられない事が確認された。この問題は律蔵の構造を解明していく上でも重要な点であり、昨年度より注目している「淨」のシステムと密接に関わりながら展開してきた問題であると捉えられる。従って、仏教史を「教団」という視点から眺める場合には、このような教団の方向性や理念を正確に把握する必要があり、その上で個々の律文献の展開史も考慮することによって、はじめて律蔵の全体的な構造と機能が明らかになっていくことを再確認することが出来たと言える。
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Research Products
(1 results)