1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710028
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大芝 宣昭 大阪大学, 人間科学部, 助手 (20283715)
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Keywords | ニホンザル / 概念形成 / 動画像 / 同種他個体 / 学習 |
Research Abstract |
1998年度に引き続き、被験体の予備訓練を行い、これが終了した後、本実験を行った。 1頭のニホンザルを被験体として、同種個体が毛づくろいしている動画像と毛づくろいしていない動画像とを弁別させた。一定数の刺激を使って訓練を行った後、新奇な刺激を導入して般化が生じるか調べた。 実験装置は、1998年度に用意した75×75×75cmの実験箱で、正面にディスプレイおよび反応キー(3つ)、左面に餌受け皿を設けた。刺激の動画像は、1998年度に、野外場面で餌付けニホンザル集団の個体を8mmVTRに撮影し、デジタル化して作成した。試行開始後、第1キーを押すと刺激の動画像が提示され、その後、第2および第3キーが点灯した。被験体は、提示された動画像が、同種他個体が毛づくろいしている光景を示していれば第2キーを、また、毛づくろいしていない光景を示していれば第3キーを押すことが求められた。被験体が正しいキーを押した場合には、ブザーが鳴り、食物報酬が与えられた。被験体が誤ったキーを押した場合には、ブザーは鳴らず、食物報酬も与えられなかった。第1フェーズでは10編の動画像を訓練に用い、新奇な動画像10編をテストに用いた。第2フェーズでは20編の動画像を訓練に用い、新奇な動画像10編をテストに用いた。 実験の結果、第1,第2フェーズとも、訓練での成績は90%以上と高かったが、テストの成績は50%前後とチャンス・レベルに留まった。両フェーズとも、毛づくろいなし条件の方が毛づくろいあり条件よりも成績が高く、被験体は「新奇な刺激が提示された場合には"毛づくろいなし"とみなす」という方略を採っていたことが推察された。 ニホンザルでは、映像と実物との対応関係が認識できない可能性が考えられる。今後は、コンピュータ・グラフィックスを利用した単純な幾何学図形を刺激として用いた知覚指向的な研究が望まれる。
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