1998 Fiscal Year Annual Research Report
自己嫌悪感と自己愛の関連からみた青年期の人格発達。
Project/Area Number |
10710048
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐藤 有耕 神戸大学, 発達科学部, 講師 (10273749)
|
Keywords | Self-disgust / self-love / adolescence |
Research Abstract |
まず,自己嫌悪感を感じる中で表れてくる気持ちについて,青年期の幅広い年齢層から記述を収集し,これを整理した。その中に含まれていた自己愛的な気持ちには,自分をかばい守ろうとする気持ちやいろいろ悪いところはあるがこれが自分だと開き直る気持ちがあった。 続いて,自己愛的な気持ちだけに焦点を当て,これを自愛心(self-love)と表現して青年を対象とした面接調査を行った。面接結果と文献研究を併せて検討した結果,自愛心に含まれる内容は8分類とする仮説が立てられた。これら8分類ごとに7項目ずつを用意し,質問紙調査を行った。その結果,自愛心の対自的側面として,自分の価値を信じ,高い要求水準を課して理想を下げず,自分にこだわっていく姿勢が見られた。その背後には,自分に失望することを極カ回避しようとして,自分の持っている高い自己イメージを守り,維持しようとする傾向があると考えられた。これに対して,自愛心の対他的側面には,現実から自分を守り,自己陶酔の中で,他者よりも自分を優先して考える姿勢が見られた。この背後には,他者や現実とのかかわり方に適切さを欠く自己中心的な傾向があると考えられた。 さらに,自己嫌悪感との関連について検討したところ,傷つくことから自己を守ろうとするという意味での自己愛的な気持ちの高さが,自己嫌悪感の高さを説明するということが明らかになった。 今後は,自己嫌悪感との関連において,自己愛的な気持ちを幅広くとらえ直しをはかり,自尊心や自己価値との関連を含めて検討していくことが必要であろう。
|