1998 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀フランスにおける教育思想と教育システムの変容に関する研究
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10710126
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
越水 雄二 京都大学, 教育学研究科, 助手 (40293849)
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Keywords | 18世紀フランス / 教育思想 / 教育システム / シャルル・ロラン / 『学習論』(Traite des etudes) / クレヴィエ / コレージュ / 啓蒙 / 反啓蒙 |
Research Abstract |
本研究は、18世紀フランスにおける教育の変容を思想面と実態面から総合的に考察することを目的とし、平成10年度は以下の作業を進めた。 1. シャルル・ロラン(1661-1741)の『学習論』(Traite des etudes,1726-28)を翻訳、内容分析した。 2. クレヴィエ『ロラン「学習論」に関する考察』(1780)の内容を検討した。 3. D・ジュリア編纂の史料集『フランス啓蒙思想の時代の教育改革』(La reforme de l'enseignementau siecle des Lumieres)から、ロラン『学習論』に言及した著作をピックアップし内容を考察した。 これらの作業から、現在までに次の点が解明されている。 1. ロラン『学習論』の内容は大きく三つに整理できる。(1)幼児と女子も対象に含む教育原理論。(2)古典(ギリシア、ラテン)語、詩学、修辞学、弁論術、歴史、哲学、以上各分野の教育内容および方法論。(3)コレージュ(当時の最も主要な学校:現代の中等教育機関に相当)での生徒指導法と教師の職務論。 2. フランスの教育界からジェズイット教団が追放され、教育の世俗化が進展した1760年代以降において、ロラン『学習論』は、教育改革を論じた行政官や教師たちによって基本文献として参照されていた。 以上に基づいて、ロラン『学習論』は、18世紀後半に現実的な有効性を認められていた教育論であり、また、啓蒙/反啓蒙といった思想的立場の違いを越えて、当時の知識人にとっての一般的教養を集約していた著作であると考えられる。この解釈は、平成10年12月に研究代表者が渡仏し研究計画のレヴューを受けた際に、フランス国立教育研究所のピエール・カスパール教育史部長からも承認された。
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