1998 Fiscal Year Annual Research Report
読書行為を視座とした明治期における小説の流通と受容についての研究
Project/Area Number |
10710206
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
菅 聡子 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (70224871)
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Keywords | 読者論 / メディア・出版 / 大衆小説 / 女性作家 |
Research Abstract |
明治期における小説の流通と受容についての研究の一端として、まず尾崎紅葉を中心とする硯友社の出版活動について調査を行った。とくに地方における活動に注目し、巖谷小波の京都在住中の活動については日記を詳細に検討した。また、尾崎紅葉については大阪駸々堂との関わりについて資料を収集した。その結果、明治二十年代大阪文壇において駸々堂が果たした役割、また紅葉と大阪文壇の関わりについてもかなり明らかにすることができた。引き続き来年度、現地での新聞の調査などを行い、論文としてまとめたいと思う。 また、メディア・ミックスの事例として『金色夜叉』を対象に調査をすすめたが、その過程で『金色夜叉』の英訳本(正確には意訳)を入手することができた。小説が読者の間でどのような形で受容されていくのか、ということを具体的に考える上で興味深い資料である。現在読解の途中であるが、両者の比較分析を行って、読者の期待の地平と受容の形態について考察する予定である。 女性作家が一つの商品としてメディア・読者の間をどのように流通するのか、という問題点については、樋口一葉を対象として論文「〈対話〉の発生装置--場所としての一葉身体--」を「文学」(1999冬号、岩波書店)に発表した。文学者仲間たちの間を女性作家としての一葉がどのように流通したのか、また一葉自身は自らの身体が喚起する意味に自覚的で、それを逆手にとることで他者の語りを引き出していることを論じ、読む/読まれるという関係性が女性作家の身体そのものをめぐって発生するその一端を示した。
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Research Products
(1 results)