1998 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける経済成長の持続性可能性に関する理論的および実証的研究
Project/Area Number |
10730008
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Research Institution | Kobe University of Commerce |
Principal Investigator |
石黒 靖子 神戸商科大学, 商経学部, 助教授 (60247947)
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Keywords | 技術移転 / 集積の経済性 / 直接投資 / 産業立地 |
Research Abstract |
80年代後半から90年代初頭にかけての東アジア諸国への日本企業の直接投資は当初より平均的に行われたわけではない。まずアジアNIESに,アジアNIESにおいて賃金率が上昇するなど生産環境が悪化すると,ASEAN諸国にさらにその周辺の地域へと投資先が拡大したが,これは東アジアの経済圏の広がりをもたらした。本研究では日本企業の直接投資の立地の選択がアジア地域の経済圏の広がりをどのように説明するか検討した。すなわち先進国企業が途上国に直接投資を行う場合,その生産性を上昇させるために多かれ少なかれ技術指導等が行うだろう。このような多国籍企業の途上国内での技術移転は,労働者の移動等により途上国内にスピルオーバーするならば当該途上国における他産業の生産性も上昇させる。したがって生産技術のスピルオーバーは集積の経済性を発生させ直接投資の立地を集中させる要因となる。日本企業による技術移転にともなう集積の経済性に注目し,東アジア地域に対する直接投資の立地の集中と東アジア経済圏の広がり,東アジア地域ににおける多量の失業や都市のインフォーマル部門の存在などを考察した。 またウルグアイラウンドでローカルコンテンツ要求がWTO違反とされたことで途上国はローカルコンテンツ要求を撤廃する必要があるが,それが途上国へ直接投資の立地集中の程度やや未熟練労働の失業水準に与える影響をロールコンテンツ要求の関税化を中心に考察した。さらに技術移転費用を明示的に考慮しこのロールコンテンツ要求の関税化が途上国への技術移転の水準にあたえる影響も考察する予定である。
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