1998 Fiscal Year Annual Research Report
ゲル高分子を用いたInterstitial Waterの研究
Project/Area Number |
10740200
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三上 充 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20272015)
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Keywords | ゲル高分子 / Interstitial Water / Fluorescence Line Narrowing / フォノンサイドバンド |
Research Abstract |
本研究は、ゲル状高分子に対する分光測定を通じ、その高分子内に捕縛されている水分子の集合(間隙水,Interstitial Water)に対する状態、構造の解析を行うことを目的としている。 特に今回、Fluorescence Line Narrowingの手法により、アモルファス状態特有の低振動モードのフォノンサイドバンドの測定において、他の高分子におけるサイドバンドのピーク位置に比べて離れる結果を得た。特に化学処理によってより水分子を捕縛しやすい側鎖をつけたゲル高分子については、更に離れる結果を得た。ブリルアン散乱測定を行い、比較検討した結果、これは高分子中に捕縛され、ガラス状構造をなしている水分子によって、水素結合を介した形で振動数が上昇したためと考えられる。またこの測定によって、ゲル中の水分子のガラス状構造の状態を観測することが可能である。 シベリアに生息する柳は、自ら細胞内の自由水を放出し、内部には束縛された水分子のみを残すことで、厳冬の中を生き残ることができる。驚異的なことに、この状態では液体ヘリウム(-269度)に浸けても生存し続けられる。我々の用いているゲル高分子中の水分子の状態は、この細胞内の水分子の状態のモデルとしてとらえることができる。この様な系で今までの有機ポリマーと異なった特徴が現れるのは興味深い。今後、今回の結果との関わり合いを探ることで、驚異の生物細胞の仕組みを従来と異なる観点から探索できる可能性がある。 そこで今後は、今回の結果を更に押し進め、異なるゲル高分子に対する測定及びコンピュータシミュレーションによる解析を行う予定である。
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