1998 Fiscal Year Annual Research Report
低温水熱反応によるSi-Al系低結晶性鉱物の生成機構
Project/Area Number |
10740253
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
河野 元治 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (80224814)
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Keywords | 火山ガラス / 溶解 / 溶脱層 / 非晶質 / 二次生成物 / 結晶化 / 風化 / ハロイサイト |
Research Abstract |
桜島火山灰を研究試料として,火山灰の主要な構成物質である火山ガラス(70-80%),bytownite(Ab_<14>An_<86>,15-20%),hypersthene(En_<54>Fs_<46>,<5%)の溶解反応と溶液からの生成物について検討した.分析に使用した試料は1990年7月28日の爆発による降灰を桜島火口より約11km西に位置する鹿児島大学の5階建てビルの屋上で採取し,ポリエチレン容器に保管したものである.採取された火山灰について,X線回折分析,走査電子顕微鏡,エネルギー分散X線分析(EDX)による構成物質の同定と化学組成の分析を行ない,主要構成物質の溶解反応と生成物の変化についてTEM-EDXにより検討した TEM-EDXによると,火山ガラスとbytowniteの表面には厚さ0.1μm以下のほぼ均一な層厚の溶脱層の生成が観察された.これらの溶脱層の化学組成は大きく異なり,火山ガラスではAlとFeの増加,bytowniteではAlの著しい減少とFeのわずかな増加を特徴とする.一方hyperstheneの表面には溶脱層は観察されず,hyperstheneマトリックスとほぼ同一組成をもつ非晶質生成物の析出が認められた.また火山灰中の主要な二次生成物として,Al,Si,Feを主要構成元素とする非晶質繊維状凝集体が観察され,凝集体中でのドメイン構造の発達と結晶化の進行,及び反応進行過程でのFeの著しい減少が確認された.これらの結果は酸化条件下での弱酸性から中性付近の水との反応で進行したもので,火山ガラスとbytowniteの溶脱層の組成(Al濃度)の違いはマトリックスの溶解速度(溶液中のN濃度)の違いを反映したものと思われる.一方生成物の変化は風化初期段階でのハロイサイトの生成過程と結晶化に伴うFeの放出反応を示すものである.
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