1998 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物の薄膜成長およびその物性と電子状態の評価
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10740280
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大嶋 江利子 理化学研究所, 表面化学研究室, 基礎科学特別研究員 (30300859)
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Keywords | レーザーアブレーション / 遷移金属酸化物薄膜 / オゾン / 二酸化窒素 / YBa_2Cu_3O_y / 高速反射電子回折 |
Research Abstract |
本年度は、主にレーザーアブレーションを用いた成膜装置の起ち上げを行った。 良質の遷移金属酸化物薄膜を得るには、成膜時の基板温度、酸化雰囲気、ターゲット上でのレーザー光の密度の制御が重要である。これらのパラメータは、得られた薄膜の結晶性のみならず、その物性にも大きく関わってくる。 基板加熱には脱ガスの少ない電子衝撃を用いた。基板温度の安定性を得るために、ヒーター部分の改良を重ね、熟容量の大きい形状を選択した。また、ヒーター温度を効率よく基板に伝えるために、ヒーターと基板との間に銀ペーストや金、インジウム等の金属箔を挟むことも検討した。 酸化ガスを基板付近に指向性よく導くために、マルチキャピラリー板を用いたガスドーザーをチャンバー内に設置した。また、酸化ガスは酸素よりも酸化力の強いオゾンや二酸化窒素を用いた。これらにより、比較的低圧力での成膜が可能になり、成膜中に薄膜の表面状態を高速反射電子回折で観察することが可能になった。 Ar-Fエキシマレーザー(波長193nm)を使用したため、レーザー光は紫外線の吸収の少ない合成石英のビューポートを通してチャンバー内のターゲット上に照射した。ビューポートの直前に置いたレンズにより、レーザー光のターゲット上での集光密度を変化させられるようにした。 本年度は銅酸化物高温超伝導体、YBa_2Cu_3O_yをターゲットとし、SrTiO_3(100)基板上での成膜を試みた。適正な基板温度とターゲット上でのレーザー密度を実現することで、基板上でYBa_2Cu_3O_y(C軸配向)の構造が得られたことを、x線回折により確認した。
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