1998 Fiscal Year Annual Research Report
NMR・計算機化学を用いたアミド化合物の構造および動的挙動
Project/Area Number |
10740291
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
禅 知明 横浜国立大学, 工学部物質工学科, 助手 (10262411)
|
Keywords | NMR / 計算化学 / アミド / 物理有機化学 / 機器分析 / 化学シフト / 回転障壁 |
Research Abstract |
第一の目的であるアミド結合のNMR化学シフト値に対する置換基効果の研究については、交差共役の存在するフェニルウレア系を採用した。この系では芳香環上の電子的な置換基効果とともに、尿素窒素原子上の立体的な置換基効果についても言及した。尿素系ではC-N結合が2つ同一分子内に存在し、その片方が動的NMR測定により回転障壁をもつことがわかった。この回転障壁は窒素上のどこの部分の水素をメチル基に置換するかにより異なった変化を示した。またフェニル基上にp-ニトロ基を導入すると、フェニル基とフェニル基側についた窒素原子(N2)との共役が強まることでO-C-N2のアミド共役が弱まり、相対的にO-C-N1のアミド共役が強まりCN1回りの回転障壁が高くなることが明らかになった。 第二の目的であるアミノ酸アミドの系については、(1)i+1位の窒素上にフェニル基を有するデペシペプチドCH3CO-NPhCH2CO-OCH2CO-NHMeの系においては、フェニル基による電子的効果と立体的効果のために、以前研究していたこのフェニル基がない系(0)に比べて、分子内β-ターンを形成しやすいことが、NMR測定およびIR測定により明らかになった。(2)生体中のタンパク質のβ-ターンに多く出現するアミノ酸、プロリン、をi+2位に持つCH3CO-NHCH2CO-N(CH2CH2CH2)CHCO-NHMe系では、上述の(0)の系に比べ、分子内β-ターンを形成しやすいことが同様に示唆されたが、この系の場合はβ-ターン形成のための分子内水素結合ともう一つの別の分子内水素結合が存在することが明らかとなった。 第3の目的である化学シフトに対するNMR化学シフト値の置換基効果の分子軌道法計算による解釈については、半経験的分子軌道法計算プログラム富士通社製WinMOPACを用いて、各化合物におけるアミドカルボニル炭素原子、アミド窒素原子、NH水素原子の電子密度を求め、ハメットプロットにより、化学シフト値との相関関係について調べた。炭素と水素原子については、電子密度と化学シフト値との間には、概してよい相関関係が見られたことから化学シフト値の決定にいわゆる反磁性項が効いていると言えるが、アミド窒素原子については相関関係が化合物系により異なった。窒素原子の化学シフトには常磁性項もかなり効いている考えられるが、まだ定量的評価までは至っていない。
|