1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10740292
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
宮武 滝太 富山大学, 工学部, 助手 (30281017)
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Keywords | 有機ホウ素化合物 / 分極構造 / ドナー・アクセプター / 励起状態 / ルイス錯体 / アミンコンプレックス |
Research Abstract |
アズレンと等電子構造であるピロール縮環ボレピンの2種類の異性体(ピロールの2.3位および3,4位でそれぞれ縮環した化合物)について新たに設計・合成を行った。ピロールの2.3位および3,4位に置換基を持つ化合物の合成法は大きく異なり、今回新たに合成方法の開発を行った。合成したピロール縮環ボレピンについて以前に合成されているチオフェン縮環ボレピン誘導体とともに、スペクトル解析に基づいて構造・物性の比較検討を行った。その結果、(1)いずれの分子もヘテロール環部分が正、ボレピン環部分が負となった分極構造を取り、ボレピンが共役系を通し電子受容性基として有効に働いている。(2)ヘテロールの種類、あるいはヘテロールの縮環部位の違いによって、ホウ素共役系の電子状態や電子受容性などの性質が大きく異なってくる。(3)ヘテロールの3,4位で縮環した化合物について励起状態において分極が著しく大きくなり、ホウ素が基底状態に比べ励起状態において炭素共役系と有効に相互作用することを示す結果が得られた。さらにホウ素部分でのLewis酸性を検討するためにアミンとの錯形成反応を行った結果、ヘテロール部分の違いによりアミンとの錯形成の平衡定数に数千倍の差が見られた。また励起状態において2,3位縮環系と3,4位縮環系との間でホウ素部分の電子状態の変化に差が認められることから、光エネルギー移動を始めとした励起状態での性質の違いが現れる可能性がある。以上の様に10年度の研究を通して、非ベンゼン系炭化水素と等電子構造を持つ含ホウ素共役系化合物の特異な共役特性を明らかにすることが出来た。この結果は共役系部位の違いによってホウ素共役系の性質をコントロールすることが出来ることを示唆している。これらの知見に基づいてさらに安定な4配位ホウ素原子を組み込んだ共役系の開発を行い、その物性についてさらに検討を行う予定である。
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