1998 Fiscal Year Annual Research Report
光学活性な新規ピリジノホスフィンの開発と触媒的不斉合成への応用
Project/Area Number |
10740338
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
伊藤 克治 福岡教育大学, 教育学部, 講師 (10284449)
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Keywords | ピリジノホスフィン / P,N-型配位子 / 不斉アリル化 |
Research Abstract |
平成十年度では当初計画に従い,まず今回開発を計画した新規ピリジノホスフィン配位子の一般的合成法の検討を行った。2-クロロシクロペンテノピリジン及び2-クロロシクロヘキセノピリジンを出発原料に用いて,サレン錯体を用いた不斉エポキシ化を鍵反応とすることにより,光学活性な各種2-クロロピリジン誘導体を合成した。得られた光学活性な2-クロロピリジン誘導体をパラジウム触媒の存在下,2-ヒドロキシフェニルホウ酸とクロスカップリングを行い,光学活性なピリジノフェノール誘導体を合成した。これ以後は常法に従って官能基変換を行い,目的の光学活性なピリジノホスフィン配位子を合成することが出来た。 得られた各種ピリジノホスフィン配位子を用いて,まずパラジウム錯体を触媒とした不斉アリル化反応を行い,その不斉誘起能について検討した。その結果,1,3-ジフェニルアリル化合物の不斉アリル化では97%eeと期待通り高い不斉収率が得られ,これまでの不斉配位子と同等の高い不斉誘起能を持つことが分かった。また,1,3-ジメチルアリル化合物の不斉アリル化では,これまでのP,N-型配位子では最高71%eeであったのに対して,78%eeとこれまでで最高の不斉収率が得られた。この基質は反応性が低く,従来のP,N-型配位子では反応時間が4日かかっていたが,今回開発したピリジノホスフィン配位子ではわずか100分で反応が終了しているのは特筆すべきことである。これは当初の期待通り,ベンゼン環と共役したピリジン環のπ-受容性によりπ-アリル錯体の反応性が上がっていることに基づくと考えられる。今後,更に不斉中心上の置換基効果・電子効果や反応条件等を詳細に検討して,不斉収率の向上を目指す予定である。なお,これらの成果は現在投稿準備中である。
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