1999 Fiscal Year Annual Research Report
個体群の空間構造が生物の繁殖戦略に与える影響に関する理論的研究
Project/Area Number |
10740364
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Research Institution | Osaka Women's University |
Principal Investigator |
江副 日出夫 大阪女子大学, 理学部, 講師 (90275230)
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Keywords | 繁殖戦略 / ESS / 性配分 / 性比 / 雌雄同体 / 雌雄異体 / 局所的配偶競争 / 数理モデル |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、交配可能な相手の範囲が空間的・時間的に限定されている場合の、個体群における安定性比や個体の進化的に安定な性配分の問題について理論的研究を行った。 従来の局所的配偶競争の数理モデルに、雌雄同体の機能発現に(自家受粉などの)コストがかかるという仮定をいれた数理モデルを構築した。昨年度の解析に用いた数理モデルは、簡略化のために理論的欠陥が生じる場合のあることが明らかになったので、その点を改良したより厳密な数理モデルを用いて、昨年度の解析よりもより一般的な場合の解析をおこなった。理論的解析の結果、雌雄同体のコストが雌機能に対してのみかかる場合、個体群における進化的に安定な性配分は、コストが大きくなるにつれて、雌雄同体のみ、雌雄同体と雌(雌性両全異体性)、雌雄異体と変化することがわかった。この結果は、個体ベースモデルによる計算機シミュレーションによっても支持された。一方、計算機シミュレーションの結果から、雌雄同体のコストが雌雄両方の機能に対してかかる場合、雌雄同体、雌雄両全異体性、雌雄異体の他に、雌雄と雌雄同体という性配分(両性両全異体性)が安定になる場合があることが示唆されていて、それに対応する理論的解析が現在進行中である。これは従来の局所的配偶競争の理論的研究においては予測されていなかった結果であり、植物個体群にしばしば見られる両性両全異体性の進化生態学的な説明となると期待される。さらに、理論的解析および計算機シミュレーションのどちらにおいても雄と雌雄同体からなる個体群(雌性両全異体性)は得られず、そのような状態が生じる要因は局所的配偶競争からは説明しにくいという結論が得られた。残りの解析が済み次第、結果をまとめて国際誌に投稿する予定である。
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