1999 Fiscal Year Annual Research Report
予疲労を与えられた上で高速引張りを受けたAl合金の破面解析
Project/Area Number |
10750077
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
板橋 正章 東京理科大学, 基礎工学部, 助手 (40212980)
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Keywords | 衝撃 / 高速引張り / 予疲労 / Al合金 / ひずみ速度 / 破面 / き裂 / 強度劣化 |
Research Abstract |
従来の構造設計において,疲労と衝撃は全く異種の負荷モードとして認識されてきた.したがって,特定の材料に対する許容応力はそれぞれ全く別個に求められてきている.しかしながら,実際の使用環境においてはこれらの負荷モードが複雑に組み合わされていることの方が多い.残念なことに,これまで疲労の研究者と衝撃の研究者が交わることがなかった.本課題はこのような状況に一石を投じるものである. 研究代表者が所属していた研究グループはA2219-T87,A6061-T6合金に予疲労後に高速引張りを与えるとA2219-T87合金のみ準静的強度よりも劣化するという現象を見出しており,仮説として「動的負荷のもとでは,強化相である第二相の周囲で母相との音響インピーダンスの差異による応力波の反射,重ね合わせが起こり,応力集中が発生した.したがって,第二相の周辺が選択的に損傷を受け,予疲労による内部損傷の導入ともあいまって,カタストロフィックな破壊への引き金となり,破壊現象全体として強度の劣化として発現した.」という予測をつけた.これにしたがって,本課題では同様な破断面を形成させてEPMAによる強化相を形成する元素の分布状況を測定した.今回の条件では残念ながら仮説を裏付けるような差異は認められなかった. しかし,どちらの合金もそれなりの強度劣化を起こしており,それなりの原因があるはずだと考えて破断面付近の側面をSEMで観察すると,破断させた試験片にはき裂がそれなりに開口しており,予疲労を与えた試験片にはそのき裂からさらに細いき裂のような線が観測された.局所的なすべりなのかモードIIのき裂なのかは判別できなかったが,試験片表面がその線に沿ってせん断を受けていた.これはバージン材の試験片にはほとんど見られないものであり,これが予疲労後の動的負荷による強度劣化の一因と考えられる.
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