1998 Fiscal Year Annual Research Report
ラット急性膵炎の重症化・再生過程におけるカルモジュリン依存性蛋白キナーゼの関与
Project/Area Number |
10770249
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
吉田 仁 昭和大学, 医学部第二内科, 助手 (90231696)
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Keywords | 急性膵炎 / カルモジュリン依存性蛋白キナーゼ / caerulein / 膵再生 |
Research Abstract |
Sprague-Dawley(SD)系雄性ラットにcaerulein 20 μg/kg body weightを4回腹腔内投与し、急性膵炎を作製した。Caerulein初回投与の6時間後に膵炎の組織学的重症度はpeakに達し、膵湿重量も最大となり、腺房細胞の液胞形成や間質の浮腫の推移と一致した。また膵湿重量あたりの蛋白量は6時間後に著減し、膵炎早期の浮腫性変化による腺房細胞密度の低下が示唆された。血清amylase値は6-9時間後に最大となった後漸減し、24時間後には対照群のレベルまで回復し、膵の組織学的炎症性変化の推移にほぼ一致した。Ca^<2+>/カルモジュリン依存性蛋白キナーゼ(CaM kinase)II活性は、(γ-^<32>P)ATPをリン酸供与体、auto camide IIを基質とし、そのリン酸化活性より算出した。膵蛋白量あたりの組織内CaM kinase II活性は、caerulein初回投与の6時間後に最大に達した後減少し、同時期のmouse抗CaM kinase II抗体を用いた免疫組織化学の検討では、膵腺房細胞内にCaM kinaseII陽性所見が認められた。caerulein誘発性急性膵炎の重症度と膵腺房細胞のCaM kinase II活性の変化は経時的にほぼ一致し、これらの関連性が推測されたため、さらにCaM kinase II選択的阻害薬、KN-62の膵炎予防効果について検討した。この急性膵炎モデルにおいて血清amylaseが最高値を示した6時間後では、血清amylaseの増加はKN-62の腹腔内投与により用量依存性に抑制され、膵腺房細胞内CaM kinase IIの活性化と、急性膵炎の成因または重症化との関連性が示唆された。また急性膵炎初期に最大となった膵組織のCaM kinase II活性は、24時間後に軽度の再上昇をきたし、その後、炎症性変化の修復および多数の腺房細胞のmitosis像が認められたことより、膵炎回復過程におけるCaM kinaseの再生因子としての役割が推測された。膵組織のカルモジュリン依存性蛋白キナーゼは、急性膵炎の成因や重症化、また再生現象に密接に関与すると考えられた。
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