1998 Fiscal Year Annual Research Report
TGF-βアンチセンスを発現するアデノウイルスベクターによる慢性膵炎治療法の開発
Project/Area Number |
10770259
|
Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
木原 康之 産業医科大学, 医学部, 助手 (80279330)
|
Keywords | TGF-β / 細胞外基質 / 線維化 |
Research Abstract |
Wistar系雄性ラット(体重200-250g)の十二指腸の胆膵管開口部.より膵管内へ逆行性にオレイン醇50μl体重を注入し、慢性膵炎モデルを作製した。膵炎作製前及び作製1、2、4、6、8、12週後に膵よりRNAを抽出し、Northem blot法を用いてTGF-βl、フィブロネクチン、1型、3型および4型コラーゲン、MMP-2、MMP-9のmRNAの発現を検討した。膵の組織学的変化はHE染色およびAzan染色を行って検討した。TGF-β1、3型コラーゲン蛋白の局在を免疫組織学的に検討した。TGF-β1mRNAの発現は膵炎作製1週後より増加し、2週後に作製前の15倍に、12週後には作製前の17倍にも達した。フィブロネクチン、1型、3型及び4型コラーゲンmRNAの発現も膵炎作製1週後に増加し、2週後に作製前の各々18倍、12倍、19倍、24倍に増加し最大となった。2週以後mRNAの発現は漸減したが、12週後も作製前の各々5倍、2倍、2倍、6倍であり、発現の増加が持続した。MMP-2およびMMP-9 mRNAの発現増加は、膵炎作製1週後より認められ、2週後に作製前の各々12倍、11倍に増加し最大となり、12週後も高値が持続した。組織学的にはオレイン酸投与後2週から4週後にかけて膵腺房の導管様変化(tubular complex)および膵小葉間に膠原線維が認められた。6週以降は膵腺房の脂肪置換が進行し、膠原線維も減少し、12週には膵腺房の大部分が消失し、ランゲルハンス島と脂肪細胞のみになった。免疫組織学的にはオレイン酸投与後2週から4週後にかけてtubular complex周囲にTGF-β1および3型コラーゲンの沈着が認められた。オレイン酸膵炎の早期ではTGF-βが細胞外基質を産生し、一過性に膵の線維化を惹起したが、後期では細胞外基質が産生と同時に細胞外基質分解酵素によって分解され、TGF-β1 mRNAの発現が持続したことから、膵炎後の膵再生が抑制された可能性が考えられる。
|