1999 Fiscal Year Annual Research Report
摘出權流頸動脈体におけ低酸素負荷時の神経発射数とドパミン放出量の関連について
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10770260
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
長内 忍 旭川医科大学, 医学部, 助手 (30292105)
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Keywords | 頚動脈体 / 低酸素化学感受性 / 神経発射 / ドパミン |
Research Abstract |
本研究では、頸動脈体におけるドパミンの作用を明らかにするため、摘出灌流頸動脈体標本を用いて組織からのドパミン放出量と頚動脈洞神経発射数を同時記録する実験系を作成した.初年度は低酸素負荷による頸動脈体からのドパミン放出量と神経発射数の関連を検討し、次年度にはドパミン合成酵素阻害薬(α-メチルチロシン)を用いて神経伝達物質の放出を阻害した際の両者の関係を検討した.この結果、多段階の低酸素負荷を行った際には、低酸素の程度と神経電位の発射数には相関関係が認められるもののドパミンとは必ずしも相関関係は認められなかった.この現象については,頸動脈体I型細胞と求心性神経線維間のシナプス様構造からドパミンが放出され、さらにドパミンが組織中で代謝されるまでの遅れが一つの原因として考えられたが、この頸動脈洞神経発射がドパミン放出と直接関連せず、ドパミン増加が副次的な反応である可能性も考えられた.本年度はα-メチルチロシンによりドパミン産生を抑制・阻害し,同様の検討を行ったところ低酸素負荷後の早期の神経発射数は低下するものの完全には消失しなかった.また、この抑制作用は低酸素負荷直後よりも負荷後数分後の反応をより強く抑制する傾向にあった.α-メチルチロシン投与後では低酸素負荷を繰り返すとドパミンの放出は減少したことから、頸動脈体のドパミン合成を阻害していることが確認された.これらの結果から,ドパミンは低酸素負荷後早期の神経電位には関与が少なく、持続的に続く低酸素状態において頚動脈体からの神経発射を維持することが主要な役割である可能性が示唆された.今後の課題としては,さらに以上の実験結果を補足するため、α-メチルチロシン投与後のドパミン合成阻害に関しては、免疫電子顕微鏡等の方法を用いドパミン含有神経分泌顆粒の減少を確認したい.また,今後の最も重要な研究課題としては,ドパミン以外のどの神経伝達物質あるいはメカニズムが低酸素による早期の神経発射を形成するのかを明らかにすることであり、この点に研究の焦点を移していく予定である。
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