1998 Fiscal Year Annual Research Report
急性肺損傷におけるサイトカイン,接着分子発現に対する細胞内レドックス環境の役割
Project/Area Number |
10770272
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
坂東 政司 自治医科大学, 医学部, 助手 (30296115)
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Keywords | Acute lung injnry / Adhesion molecule / -Signal transduction / redox state / oxidative stress / antioxidnt / Protein Kinase C |
Research Abstract |
急性肺損傷の本態は,肺胞上皮および肺微小血管内皮細胞の広範な損傷により生じる透過性亢進型肺水腫であり,その病態には炎症性サイトカインや細胞接着分子が深く関与している.これらの遺伝子発現に関する細胞内シグナル伝達経路には活性酵素種(ROS)が重要なメッセンジャーとして注目されており,AP-1やNF-κBなどの転写因子の活性化にも関与している.本研究ではサイトカイン刺激による肺血管内皮細胞上の接着分子発現亢進および制御メカニズムを明らかにすることにより,急性肺損傷に対する新しい治療法の開発を行うことを目的とし,研究を行っている.本年度に実施した研究結果を以下に示す. (l) ROSの産生経路に関する検討 ROSの産生には,xanthine oxidaseの関与が考えられ,今回,xanthine oxidaseの阻害剤であるallopurinolを用い,接着分子発現に対する抑制作用の有無を検討した.allopurinolはE-selectinやICAM-1などの接着分子の発現を用量依存性に抑制した. (2) 細胞内グルタチオン(GSH)レベルの変化に伴う接着分子発現への影響の検討 細胞内の主たるROSスカベンジャーであるGSHに注目し,γ-gulutamyl-cysteine合成酵素阻害剤で,GSHの新生を抑えるBSOおよびoxidized GSH(GSSG)還元酵素阻害剤でGSSGからGSHへのリサイクルを抑えるBCNUを用い,接着分子発現の変化について検討した.BSOやBCNUは接着分子の発現を用量依存性に抑制した. (3) プロテインキナーゼC(PKC)および蛋白チロシンキナーゼ(PTK)の接着分子発現への影響の検討 PKCおよびPTKの選択的阻害剤であるcalphostin C(CC),genistcin(GN)を用い,接着分子発現に対する抑制作用の有無を検討した.CCはNF-κBの抑制を介してこれらの接着分子の発現を抑制した. 以上,本年度の研究によりサイトカイン刺激による肺血管内皮細胞上の接着分子発現亢進にはROS,NF-κB.およびPKCが重要であることが示唆された.
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Research Products
(2 results)