1999 Fiscal Year Annual Research Report
家族性アルツハイマー病における転写因子制御異常の分子機構の解析
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10770293
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
姚 野崎 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (30301493)
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Keywords | アルツハイマー病 / 細胞死 / 転写因子 |
Research Abstract |
前年度までの研究で、ア病原因遺伝子であるV642型APP変異体が活性化するシグナルの一つを担うことが判明しているG蛋白γ2を強発現した神経細胞株F11/γ2の発現遺伝子をF11親株での発現遺伝子からサブトラクションするディファレンシャルディスプレイ法を用いて、いくつかの遺伝子発現が変化していることを明らかにした。そのうち核転写因子の構造をもつ唯一の遺伝子がME2であった。ME2は、AとBの2つのスプライシングバリアントからなるbHLH構造を有する機能未知の分子であり、シナプス可塑性との機能関連性が示唆されているが詳細は不明であった。まず、ロングバージョンであるME2-B cDNAをF11細胞に一過性導入したが何らの変化も誘導されなかった。このことは、ME2-B遺伝子が組織非特異的であることと合致し、Gγ2によって誘導されるME2分子ではないことを示唆する。次に、神経特異的なME2-A cDNAをマウス大脳よりクローニングし、F11細胞に導入したところ、神経突起の伸長が有意に惹起され、F11/γ2細胞に類似した細胞形態を示した。ME2-Aによる神経突起伸長作用は、Gγ2のそれより弱く、又、ME2のようなbHLH蛋白はNeuroDなどとのヘテロ2量体を作ることが知られているので、NeuroD cDNAをME2-A cDNAと共に導入する実験を行ったが作用の増強は見られなかった。F11/γ2細胞とF11細胞においてME2Aの発現を調査したところ前者の細胞において70kDaのME2A蛋白は確かに強発現しており、F11細胞では発現は検出されなかった。今回の検討では、神経分化を誘導するGγ2のシグナルの少なくとも一つはME2A遺伝子発現を介すること、神経特異的なME2A遺伝子は神経突起伸長促進作用を有することが明らかになった。今後同遺伝子とア病病態との関連を調査する予定である。
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