1998 Fiscal Year Annual Research Report
血行力学的脳梗塞の起立負荷時の脳循環動態の治療効果と判定
Project/Area Number |
10770299
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
田中 尚 近畿大学, 医学部, 講師 (20268428)
|
Keywords | 内頚動脈閉塞症 / 脳循環 / 頚部超音波ドプラー / 血圧 / 一過性脳虚血 / 起立試験 / 脳塞栓症 / 自動調節能 |
Research Abstract |
本年度は内頚動脈閉塞症患者における立位負荷の脳循環への影響を頚部超音波ドプラー法により検討した。 対象;脳血管撮影またはMRAで確認された一性内頚動脈起始部閉塞症の患者11名(63.0±7.2歳)(平均±標準偏差)。原因疾患;アテローマ血栓性脳梗塞4例、心原性脳塞栓症2例、一過性脳虚血発作4例、無症候1例であった。 方法;duplex頚部超音波装置(東芝社製SSH-14OA、7.5MHzリニア型探触子)を用いて、患側総頚動脈を長軸方向に描出した。次に、内頚動脈分岐部より約2cm中枢側総頚動脈内にドプラービームと血管の角度が60度以下になるようにサンプルボリュームームを設定した。まず、臥位での収縮期血流速度・平均血流速度・拡張末期血流速度を測定した。次に、患者を起立させ同様の検査を行った。検査中は左肘動脈に自動血圧計を装着し、血圧及び心拍数を連続記録した。 統計処理:対応のあるT検定を用い,危険率5%以下を有意とした. 結果; (1) 血圧の変化;平均血圧は臥位時98.0±7.0mmHg,立位時103.8±16.5と差異は見られなかった。 (2) 脈拍数の変化;臥位時の平均脈拍は69.4±8.2回/minで立位により79.9±13.5と有意に上昇していた(P<0.01) (3) 収縮期血流速度:立位による有意な変化は見られなかった。 (4) 平均血流速度;臥位時23.6±5.6cm/secであったが、立位負荷にて18.1±3.5と有意に低下した(P<0.01)。 (5) 拡張末期血流速度;臥位時8.9±3.1であったが立位時には3.6±3.0とやはり有意に低下していた(P<0.01)。 考察;今回の私達の結果からは、立位に伴う血圧低下がなくても閉塞側の内頚動脈の血流は低下するものと考えられた。これは、立位時により頚動脈圧に低下するが、それに見合う血流量の増加が生じていないためと考えられた。この原因の理由として、内頚動脈の閉塞は結果として脳の自動調節能を障害している可能性も示唆された。次年度は、この病態をSPECTを用いてさらに検討する必要があると考えている。
|