1998 Fiscal Year Annual Research Report
細動周期変動の解析による心房細動停止機序に関する研究
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10770302
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
福士 智久 弘前大学, 医学部, 助手 (10292153)
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Keywords | 心房細動 / バスケットカテーテル / ピルジカイニド / カテーテルアブレーション |
Research Abstract |
現在、心房細動維持の機序は動物実験でrandom reentryと推察されているが、その停止機序については動物実験でも相反する報告があり、いまだに不明である。また、薬物治療に関しては、伝導抑制あるいは不応期延長作用を擁する抗不整脈薬が使用されるが、その効果は決して十分とはいえず、また非薬物治療では外科的にはMaze手術は、その効果において一定の評価が得られているが、カテーテルアブレーションによる心房内の線状焼却は、心房細動の一般治療としてはいまだ認知されていない。本研究ではIc群抗不整脈薬であるピルジカイニド(PIL)を服用時の発作性心房細動(af)停止時機序を、バスケットカテーテルを用いた右房内多点同時電位記録から検討した。心房粗動の既往のない発作性af症例6例の誘発afまたは自然発作af中に64極バスケットカテーテルを右房内に挿入し、PIL(150mg)を単回経口投与した。64極中、自由壁および中隔側の48極で、投薬前および投薬後10分毎に最長80分またはaf停止時まで各々4秒間電位を同時収集し、各極興奮周期(FF)を計測し、その平均値(meanFF)と標準偏差(SD)を算出した。全計測点のmeanFFとSDの平均値(T-FF、T-SD)を求め、PIL後の変化を観察した(時間的効果)。またPIL投与によりmeanFFが有意に延長した計測点とSDが有意に縮小した計測点の比率を各例毎に算出し、それぞれS-FF、S-SDとした(空間的効果)。PIL投与により6例中3例でaf停止を認めた。PILはafの平均周期を延長し、そのばらつきを小さくした(時間的効果)。この効果がaf停止例において非停止例に比しより多くの計測点で認められたことより(空間的効果)、心房興奮の均整化(粗動化効果)がPILのaf停止機序に関与すると考えられた。しかし、停止時の詳細な検討ではaf停止の3例中2例において、心房細動の起源は左心房内にあるとの知見が得られ、今後は左心房内のマッピングも含めた、さらなる検討が必要と思われる。
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