1998 Fiscal Year Annual Research Report
心臓副交感神経作動薬を用いた心臓自律神経予備能測定法の開発と治療への臨床応用
Project/Area Number |
10770337
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Research Institution | Research Institute for Production Development |
Principal Investigator |
井野邊 義人 財団法人生産開発科学研究所, 研究員 (30301740)
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Keywords | 塩酸ピレンゼピン / l-123 MIBG心筋シンチグラフィ / 心拍変動パワースペクトル解析 / 心臓交感・副交感神経 / 糖尿病性自律神経障害 |
Research Abstract |
本研究は心臓副文感神経作動薬である低用量ピレンゼピン(PZ)の薬理作用を応用し、1)心臓副交感神経刺激時の心臓交感・副交感神経相互作用、2)1-123MIBG心筋シンチグラフィを用いた局所心臓交感神経活動動態の差異、3)PZによる心臓自律神経予備能測定法の有用性についての検討を行った。 1) 健常者8例にPZ0.05mg/kgを静脈投与し、1-123MIBG心筋シンチグラフィの心臓交感神経活動指標(30分後と4時間後のSPECT像のPolar mapにおける洗い出し率の変化)と心拍変動パワースペクトル解析の心臓副文感神経活動指標(高周波成分:HF)との関係を検討した。PZによりHFは有意に増加し、MIBG心筋シンチグラフィの洗い出し率は有意に減少した。両者の変化は逆相関関係を示したことより、外因性の副交感神経刺激時には交感神経は抑制されることが示された。 2) MIBG心筋シンチグラフィのPolar mapから9分割局所洗い出し率を算出し局所交感神経動態を検討した。PZ投与により心臓全体の洗い出し率は低下したが、特に前壁に比して下壁での変化が著明であった。従って、副交感神経刺激に対する反応性は前壁より下壁の方が高く、心臓の自律神経調節に局所的差異がある可能性が示唆された。 3) 健常者10例、糖尿病患者25例(自律神経障害を有さないD1;15例、有するD2;10例)を対象として、PZを0.05mg/kg静脈投与し心臓副交感神経の反応性の差異を比較した。D1群、D2群では健常者に比較して安静時HFは明らかに低値であったが両群間に差はなかった。PZ投与によりHFは健常者とD1群では有意に増加したがD2群では反応を認めなかった。以上より、PZ投与による副交感神経機能の反応性に基づいて、安静時には検出できない潜在的心臓副交感神経機能を評価しうる可能性があり、同負荷試験は心臓自律神経機能検査として有用であると考えられた。
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