Research Abstract |
バルビタール麻酔下雄性Sprague-Dawley系ラットに,腸間膜静脈を介して門脈内へ生理食塩水に溶解した10mMオレイン酸ナトリウムを0.45ml/100gBW/hrの速度で注入し,イヌリンの持続静注下に腎クリアランス実験を行った.門脈内へのオレイン酸素投与により,尿量,糸球体濾過値,尿中ナトリウム排泄量は,生理食塩水単独投与に比してそれぞれ170,165,129%増加した.一方,前処置として両側腎除神経を行ったラットでは,オレイン酸を門脈内へ投与しても,上記のパラメータはいずれも変化しなかった.別のSprague-Dawley系ラットを同様に麻酔し,側腹切開にて左腎神経を露出し,電極を装着し,腎交感神経活動を血圧,心拍数とともに連続記録した.単位時間あたりのバースト数で示される腎交感神経活動は,オレイン酸の門脈内投与により前値の約60%へ減少した.以上より,門脈内へのオレイン酸投与は,糸球体濾過値を増加させることが確認され,その機序として腎交感神経の抑制を介する腎血管拡張作用の関与が推測された,肥満者では,代謝回転の速い内臓脂肪の蓄積により,門脈内へのオレイン酸を含めた遊離脂肪酸の流入が増加していると考えられる.今回の検討で明らかになった,遊離脂肪酸による糸球体濾過の増加とナトリウム排泄の増加は,それ自体は高血圧に拮抗すると考えられる.一方,臨床においては,肥満,とくに内臓脂肪型肥満では,高血圧を合併する頻度が赤いことが知られている.今後は,オレイン酸素の慢性投与の効果,交感神経賦活作用を有し,肥満において脂肪組織での産生が増加するレプチンとの相互作用を含めて,肥満と高血圧の関連についてさらに検討を進めたい.
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