Research Abstract |
昨年度,ヒト側頭骨標本による免疫組織化学的方法により,ヒト内耳の交感神経系の分布を検討するため,まず,通常の方法で作製・保存されたヒト側頭骨連続切片を対象として免疫組織学的方法の確立を図った.研究実施計画に基づき,水酸化ナトリウム飽和メタノールの希釈液にての処理を基本とし,一次抗体として抗tyrosine hydroxylase抗体を用いた.しかし,抗原の検出が悪く,microwave oven照射も切片の形態上の問題もあり,通常のABC法にかわりDAKO社Catalyzed Signal Amplification Systemを使用した.この方法も非特異的反応が多く改善が必要と思われた. このため今年度はさらなる免疫組織化学的方法の改善と,それにともない,まず平成10年度の研究実績事項の一部再確認を行った.その結果,昨年報告した蝸牛での血管条,骨ラセン板,蝸牛軸での反応,前庭での感覚上皮下組織の反応と思われたものは,HE標本等との比較などから,反応沈着物ではないとの結論を得,この部分に関しては本来の反応と,切片作成上の沈着物(アーチファクト)との識別がDABによる発色では困難であると判明した.このため,反応沈着物の可視化に他の赤色の発色剤を使用したが,感度が低く,使用は困難と考えられた.以上から,側頭骨内の観察部位を内リンパ嚢周囲に限定し,以後の観察を行った.また,昨年度の免疫組織化学的方法にもさらに改善を加える必要があり,これを平行してして行った.まず,陽性対照としての内頚動脈の周囲の交感神経に反応が認められた.内リンパ嚢周囲では,上皮下組織,またそこに存在する血管の周囲に散在性に交感神経の反応が存在すると考えられた.内リンパ嚢の解剖学的部位別の詳細は検討中である.しかし,神経としての走行の連続性が未確認であるため,今後,さらに連続切片上での観察も必要と考えられた.
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