1998 Fiscal Year Annual Research Report
調理過程における油脂過酸化物の分解と毒性アルデヒドの生成に関する研究
Project/Area Number |
10780080
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
高村 仁知 奈良女子大学, 生活環境学部, 助教授 (70202158)
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Keywords | 油脂過酸化物 / ヒドロペルオキシド / 過酸化脂質 / 脂質過酸化 / 食品成分 / ラジカル補足活性 |
Research Abstract |
油脂に含まれる高度不飽和脂肪酸は、食品の加工や調理の過程で酸化されやすく、その結果、油脂過酸化物が生成する。油脂過酸化物はさらに食品中の他成分と反応する過程で分解や重合をおこし、2次生成物が生ずる。また、油脂過酸化物やその代謝物は毒性を示し、老化や発ガンの原因ともなる。しかし、実際の食物においては多くの食品成分が共存しており、また、さまざまな調理操作が加えられるため、油脂過酸化物の挙動については明らかではない。本研究では、実際の食物における油脂過酸化物の分解とこれに由来する毒性アルデヒドの生成について、各種の食品成分や調理操作による影響をも含めて明らかにすることを目的に研究を遂行している。本年度は、油脂過酸化物として、リノール酸13-ヒドロペルオキシド(13-HPOD)を用い、種々の糖類、ビタミン類、アミノ酸類等の存在下で13-HPODの分解をHPLCで追跡した。その結果、13-HPODの半減期は水中30℃で約20時間であった。糖類(単糖、二糖、デンプン)は濃度0.1Mまたは1%でも13-HPODの分解に有意な影響を及ぼさなかった。ビタミンC(アスコルビン酸)は濃度0.01Mで分解を大きく促進した。また、ほとんどのアミノ酸、特にリジン、アルギニン、およびトヘリプトファンはHPODを安定化したが、システインは濃度0.01Mで分解を大きく促進した。また、種々の液体食品の影響を調べたところ、種々の茶類、ジュース類、だし、醤抽はHPODを安定化した。これらの食品に含まれるラジカル捕捉活性成分が分解反応を抑制したものと考えられる。以上の結果から、油脂過酸化物は、食品中では比較的安定に存在し、多くの食品成分が分解を抑制することが明らかとなった。
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