1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10780136
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
小島 郷子 高知大学, 教育学部, 助教授 (20225428)
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Keywords | 家庭科教育 / 金銭教育 / 消費者教育 / 学校教育 |
Research Abstract |
わが国における金銭教育の現状を把握し、消費者信用に支えられたカード社会、キャッシュレス社会に対応できる学校教育における金銭教育の在り方を追求する目的で研究を行った。本年度は高知県の中学校31校、高等学校46校の885人の教員を対象にアンケート調査を実施した。有効回収率は中学校47.7%、高校62.6%であった。調査内容は、金銭教育観、金銭教育の目標と内容、学習の時期、金銭教育への関心、子どもの金銭感覚などである。金銭教育における「金銭の働きを理解させる認知的領域」と「金銭とおした生き方を教える情意的領域」の二面性に着目し、両側面のバランスという視点から分析を行う。 結果は、中・高等学校教師の7割程度が金銭教育の実践経験を持っており、実践の場としては、中学校では特別活動が最も多く、次いで道徳、家庭科と続く。また高等学校では、家庭科が最も多く、特別活動、社会と続く。金銭教育の目標からは、中・高等学校いずれも、「物を大切にする心の育成」や「健全な金銭感覚の育成」など、情意的領域を重視する傾向が見られ、「金銭の機能を理解する能力の育成」などの認知的領域はあまり重視されていないことがわかった。また、教育内容の分析からも同様の結果が得られ、中学校や高等学校で実践されている金銭教育は、金銭をとおした生き方を教える情意的領域に偏向していることがわかった。この結果は、小学校における金銭教育の現状とも一致し、今日学校教育で実践されている金銭教育は道徳や特別活動が中心的役割を果たしており、人間教育先行型の教育であることが明らかとなった。 さらに、金銭教育の主体は家庭にあるとの考えをもつ教師が多く、教育主体別の役割の明確化と共に、認知的領域を担う金銭教育の在り方を教科および総合的な学習の時間を含めて追究していくことが今日的課題である。
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