1999 Fiscal Year Annual Research Report
家事調停および民事調停過程のコミュニケーション分析
Project/Area Number |
10831007
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
樫村 志郎 神戸大学, 法学部 (40114433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 敬一 埼玉大学, 教養学部, 教授 (80191261)
南方 暁 新潟大学, 法学部, 教授 (70125805)
棚瀬 孝雄 京都大学, 法学研究科, 教授 (80022424)
米田 憲市 鹿児島大学, 法文学部, 助教授 (20283856)
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Keywords | 紛争処理 / 調停 / 法 / コミュニケーション / 会話分析 / エスノメソドロジー / 語用論 / ビデオ分析 |
Research Abstract |
平成11年度には、研究協力者の助言を得ながら、つぎの研究を実施した。 (1)法的紛争にかんする模擬事例を用いた大学院生(社会人)による調停シミュレーションとその分析。その結果の一部を「合意の観察可能性」というタイトルで同年9月発行の共著書『現代調停の技法』(井上治典・佐藤彰一編、判例タイムズ社)の一部として発表した。これは、調停シミュレーションを用いて、調停の開始の直後のコミュニケーションにおいて、調停人の権威が、当事者によって承認される傾向を強化するようなコミュニケーション上の構造が存在することを示したものである。また、会話分析とエスノメソドロジーに関する方法論については、前年度から「規範の身体-エスノメソドロジーの犯罪社会学への応用」(『犯罪社会学研究』23号)で考察を行ってきたが、本論文の一部では、法的コミュニケーションの研究のために、シミュレーションを用いることの方法論的問題点を、エスノメソドロジーの観点から論じている。 (2)法的紛争と対比するために日常的コミュニケーション場面のデータ収集と分析。このデータはなお分析中である。 (3)調停がその一種であると考えられる、制度的コミュニケーションの分析を継続した。とりわけ、法的コミュニケーションの全体的特徴としては、研究代表者が指導する大学院生菅野昌史との共著「契約過程の方法的組織化」(棚瀬孝雄編『契約法理と契約慣行』所収(1999年11月刊)を執筆する中で考えを深めることができた。また、家事事件の制度的枠組みについては、専門の現職裁判官の協力を得て、インタビューという形ではあるが、情報を得ることができた。 (4)以上を基礎として、本年度は、法的コミュニケーションを、会話の特徴としてとらえるとい一般理論的アイディアを発展させ、会話の独特の位相である「定式化」を引き金にしてコミュニケーションの法的性格が強まるという暫定的結論にいたった。 (5)本研究を進めていく中で、本研究のとる視角と大きく共通する先行研究例として、川島武宜による法的コミュニケーション分析の枠組みがあることに気づいた。この点をより追求するため、川島武宜の蔵書と研究資料のほとんどを収めている川島文庫(札幌大学)を訪問し、家族論、コミュニケーション論、方法論に注目して文献的調査を行った。その結果、川島の分析は、法的コミュニケーションをマクロな法文化の中でとらえた点に限界があるが、法学研究とコミュニケーション研究の架橋の試みとしてすぐれたものであることがわかった。また、今後は、本研究のようなよりミクロな方向で川島の理論を発展させていく可能性があることを確認した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 樫村志郎: "合意の観察可能性"井上治典・佐藤彰一編 『現代調停の技法』(判例タイムズ社). 294-307 (1999)
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[Publications] 樫村志郎: "「共同性の法社会学」に向けて"法社会学. 51. 8-21 (1999)
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[Publications] 樫村志郎、菅野昌史: "契約過程の法定的組織化"棚瀬孝雄編 契約法理と契約慣行(弘文堂). 233-249 (1999)