1998 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ合衆国連邦政府との関係に現れたラコタ族の民族としての特質に関する研究
Project/Area Number |
10871051
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
阿部 珠理 立教大学, 社会学部, 教授 (50184213)
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Keywords | 自然観 / 人間観 / 雄弁術 / 談話分析 / 不平等条約 |
Research Abstract |
平成10年度は、主として、ララミー条約の草稿や最終条文を中心に、ラコタ族とアメリカ合衆国連邦政府とが交わした条約条文、ウーンデッド・ニーに関する資料などを主として収集した。ララミー条約は第一次(1851)、第二次(1868)があるが、合衆国政府がアメリカ先住民との条約締結に終止符をうった1871年以降のスー族関係の法令、とりわけ1877年のブラック・ヒル条例も含めた合衆国、スー族の交渉資料を収集した。それら資料には、スー族の交渉代表者、レッド・クラウド、スボッテド・テールとインディアン局高官との交渉の議事録、また両者の公的、私的コメントが含まれる。さらに首都ワシントン滞在中の両チーフに関するニュース報道を網羅した結果、二人の首都での交渉の足跡が明らかになった。これら資料の分析の結果、第一次および二次ララミー条約、ブラック・ヒル条例とそれにともなうスー族の漸次的権利喪失が明確に位置づけられた。さらに力の不均衡を背景に圧倒的に不利な交渉の環境下においても、ことにレッド・クラウドが示した卓抜した交渉力には、先住民特有の雄弁術が遺憾なく発揮されており、当峙の白人社会に先住民の自然観、人間蜆を説得力をもって紹介していた事実が明らかになった。これら成果は現在執筆中の論文(せりか書房刊)の一部に含まれる。
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