1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10874051
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
毛利 信男 東京大学, 物性研究所, 教授 (40000848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹下 直 東京大学, 物性研究所, 助手 (60292760)
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Keywords | スピン・シングレット / スピン・パイエルス転移 / NaV_2O_5 / 誘電異常 |
Research Abstract |
昨年度に引き続きNaV_2O_5のスピン・シングレット転移に伴う誘電特性を高圧下並びに磁場下で行った。 その結果次の新しい事実が判明した。 1 c軸方向での測定において、0.6GPaで誘電率にピークを持つ温度に対応する転移が2つに分裂するのが見えた。この2つの転移温度は圧力で降下し、転移温度での誘電率も圧力に依存する。しかし、1.2GPaでは高温側の転移は見分けが着かなくなり、低温側の転移は2GPaで12.3Kまで降下した。 2 c軸方向に現れる誘電率異常に関して磁場の影響を調べた。その結果、加圧により転移温度が降下するに連れて2つの転移温度はともに磁場による影響が受けやすくなり、転移温度は大きく低温側へシフトすることが見出された。また、誘電率は転移温度近傍のみで磁場と伴に増大することが明らかとなった。 昨年までに得られた実験結果、(すなわち、NaV_2O_5のスピン・シングレット転移において誘電率の異常はa軸とc軸においてのみ観測され、b軸では何ら異常が見出されなかった)に加え、今年度の実験結果からNaV_2O_5のスピン・シングレット転移に関しては次のような結論が得られる。 イ)転移温度の磁場依存性はスピンパイエルス転移で理論的に予想される値より約3.5倍程度小さいことから、NaV_2O_5のスピン・シングレット転移はスピン・パイエルス転移ではないという結論に達した。この結論はX線回折の結果とも符合する。 ロ)結晶軸に依存する誘電異常の圧力効果の観測結果からNaV_2O_5の相転移は電荷秩序に起因するものであると結論づけられる。電荷秩序の方向は特定できないがb軸方向に誘電異常が観測されないことからb軸に垂直な面内の原子変位をともなう電荷秩序が形成されていると推論できる。
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