1999 Fiscal Year Annual Research Report
局所的量子分子動力学法による単層ナノチューブ生成機構の解明
Project/Area Number |
10875047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸山 茂夫 東京大学, 工学部・附属総合試験所, 助教授 (90209700)
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Keywords | 単層炭素ナノチューブ / 分子動力学法 / 生成機構 / 量子効果 |
Research Abstract |
高温オーブン・レーザー蒸発フラーレン生成装置やアーク放電フラーレン生成装置において,炭素ナノチューブが生成することが分かっているが,通常生成されるナノチューブは,チューブが何重にも入れ子状になった多層チューブであり,単層のナノチューブの生成には炭素材料にNiやCoなどの金属を添加することが必要である.本年度試作した高温オーブン・レーザー蒸発装置においてもNiとCoを添加した炭素材料を用いて,単層ナノチューブが生成されることを確認している.本研究では金属原子あるいは金属クラスターと干渉しながら単層炭素ナノチューブが生成する過程を分子シミュレーションによって予測することが最終目標であったが,特に,ナノチューブ生成の初期過程において,金属原子と炭素クラスターが相互作用する部分に注目した.ここで,金属原子としてNiに着目したが,同様の実験条件でScやLaを炭素材料に添加すると金属原子を内包したフラーレンが生成されることから,比較のためにScとLaについても計算を行った.最初に,金属原子 (Ni,Sc,La) と炭素原子との原子間ポテンシャルを密度汎関数法(B3LYP) を用いた量子計算の結果に基づいて構築した.炭素原子と金属原子との相互作用は炭素―炭素間の共有結合を表現するTersoff型のポテンシャルをベースとし,炭素クラスターと金属原子間の電荷移動を量子計算により見積もり,これに基づくクーロン力を加えて表現した.このポテンシャルを用いた古典分子動力学法シミュレーションの結果,LaやScの場合はフラーレンに内包されたが,Ni原子は,フラーレン構造に近いクラスターの大きな環状の穴部分に付着して,あたかも閉じたフラーレン構造の形成を阻止するかのように働くことが分かった.このように,フラーレンケージ形成をNi原子が妨害することが単層ナノチューブ生成につながると考えられる.
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[Publications] S.Maruyama: "Formation Process of Empty and Metal-Containing Fullerene-Molecular Dyamics and FT-ICR Studies"Fullerene Science and Technology. 7・4. 621-639 (1999)
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[Publications] 丸山茂夫: "炭素クラスター合成過程の分子シミュレーション"プラズマ・核融合学会誌. 75・8. 921-926 (1999)
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[Publications] Y.Yamaguchi: "A Molecular Dyanamics Study on the Formation of Metallofullerene"The European Physical Journal D. 9・1-4. 385-388 (1999)
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[Publications] 山口康隆: "金属内包フラーレン生成の分子動力学シミュレーション"日本機械学会論文集(B編). 65・630. 431-436 (1999)