2000 Fiscal Year Annual Research Report
歯面へ析出させた金属イオンによる接着力強化法:予備的検討
Project/Area Number |
10877314
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
矢谷 博文 岡山大学, 歯学部, 教授 (80174530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金島 拓史 岡山大学, 歯学部, 助手 (80284066)
鈴木 一臣 岡山大学, 歯学部, 教授 (30050058)
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Keywords | 象牙質 / 接着性レジン / 接着強さ / 銀 / チタン / 析出 |
Research Abstract |
現在,補綴装置の装着は歯科用セメントを用いて行われているが,最大の被着面である象牙質に対する接着力はいまだ不十分である.申請者は,接着性レジンのもつ歯科用合金に対する優れた接着性に着目し,象牙質自身に金属を析出させる歯質強化を行えば,歯質と金属ではなく,金屑イオンを介した象牙質と歯科用金属の接着というまったく新しい形で補綴装置を合着できるのではないかと考えた。さらに,析出した金属イオンによる抗菌作用も期待できると考え,象牙質表面へ接着に有効な金属イオンを析出させる研究に着手した. 象牙質に対する金属による歯質強化法の開発及び検討 1.接着性レジンと強い接着力を有するチタンイオンの象牙質表面への析出 四塩化チタン,チタン酸テトライソプロピルやチタン錯イオンモノマーを中心に検討を行ったが,良好な結果は得られなかった。 2.抗菌作用をもつ銀の牛歯象牙質表面への析出 アンモニア性硝酸銀水溶液とホルムアルデヒドを用いて,牛歯象牙質に対し銀を析出させる試みを行い,銀の析出を認めた.さらに,水溶液の濃度と浸漬時間を変化させたときの銀の析出量を測定し,濃度-析出量曲線ならびに浸漬時間-析出量曲線を求めた.その結果,析出量は濃度ならびに浸漬時間に有意に依存していることが明らかとなった. 臨床的見地からすると析出量が少なくとも,辺縁漏洩が少ない等の臨床上の利点があれば齲蝕発生リスクを低下させることができると考えられる.そこで、濃度ならびに浸漬時間を変えて金属を析出させた象牙質に歯科用金属を接着した試験片を用いて辺縁漏洩ならびに接着強さの検討を行った.その結果,最大の接着強さと最小の辺縁漏洩を示した試料は,銀の析出量が最大の試料ではないことが明らかになった.これは,銀析出量が多すぎると接着界面が脆弱になるためと思われた. 今後は,本技法の臨床応用を可能にすべく,塗布するだけで接着に有効な被着面の得られる銀含有溶液の開発に取り組む予定である.
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