1998 Fiscal Year Annual Research Report
胎生期から新生期にわたる呼吸中枢解析のためのマウス摘出脳幹-脊髄標本の開発
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10878152
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
荒田 晶子 (財)東京都神経科学総合研究所, 病態神経生理学部門, 研究員 (00266082)
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Keywords | 胎生期〜新生期 / マウス / 摘出脳幹-脊髄標本 / 呼吸リズム形成機構 / 呼吸不全 / ノックアウトマウス / 機能的神経回路網の発達 / シナプス形成 |
Research Abstract |
呼吸の神経回路は生まれて、すぐに呼吸し始められるように基本的なところは胎生期において完成していると考えられる。しかし、いつ呼吸リズムが生まれ、どのように発達するのかについては、ほとんど知られていない。また、胎生期にほぼ完成する呼吸系神経回路は遺伝子レベルで制御されていると考えられる。マウスは、神経機能の発達が早く、遺伝子組み換え技術を用いることによって、遺伝子の発現と呼吸性ニューロンネットワーク解析に威力を発揮する。本研究では、胎生・新生期マウス摘出脳幹-脊髄標本を開発することにより、胎生型から成熟型へのネットワーク変遷を追える実験系を確立し、呼吸不全を示す遺伝子欠損マウスの摘出脳幹一脊髄標本を併用することによって、呼吸リズム形成ネットワークの発達と遺伝子レベルの制御の解明を目的とする。 本年度は、胎生・新生マウス摘出脳幹-脊髄標本の作製と呼吸中枢ネットワークの解析を試みた。新生マウスをエーテル深麻酔後、脳幹・脊髄部分を摘出する。標本を実験灌流槽に置き、95%O_25%CO_2で飽和したクレブス液(25-26℃)で灌流する。ガラス吸引電極を用いて、横隔神経へ出力する第4(C4)頚髄前根から記録されたバースト活動を呼吸の指標とした。胎生マウス摘出脳幹一脊髄標本は、不規則な呼吸リズムが観察される日齢(E13-14)以降のマウスを使用した。マウス標本の04はE18まで不規則なバーストが混在しているが、低濃度アドレナリンにより、不規則性バーストは消失し、呼吸性ニューロンネットワークのみが強まった。新生マウス摘出脳幹-脊髄標本の延髄部(呼吸リズム形成機構が存在する)から、ホールセルパッチクランプ法を用いて、呼吸性ニューロンを細胞内記録した結果、吸息先行型ニューロン3種類と吸息性ニューロン3種類と呼息性ニューロン2種類の計8種類に分けられた。この中に成熟型に近いタイプのものが観察された。また、胎生期のマウス摘出脳幹-脊髄標本において、胎生13-16日齢のC4吸息性活動は吸息相が短い。胎生17以降のC4吸息活動は吸息相が長く新生型呼吸となる。これは、吸息性ニューロン同士の興奮性シナプスが発達したためであると考えられた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Arata,A.,Onimaru,H.,Homma,I.: "Possible synaptic connections of expiratory neurons in the medulla of newborn rat in vitro." NeuroReport. 9. 743-746 (1998)
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[Publications] Arata,A.,Onimaru,H.,Homma,I.: "The adrenergic modulation of firings of respiratory rhythm generating neurons in medulla-spinal cord preparation from newborn rat." Experimental Brain Research. 119. 399-408 (1998)
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[Publications] Lindsey,B.G.,Arata,A.,Morris,K.F.,et al.: "Medullary raphe neurones baroreceptor modulation of the respiratory motor pattern in the cat." Journal of Physiology. 512. 863-882 (1998)
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[Publications] 鬼丸 洋・荒田晶子・本間生夫: "呼吸のリズム形成:摘出脳幹-脊髄標本を用いた研究" 呼吸と循環. 46. 773-782 (1998)