2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本における日比混血児の人種化―可視性、分類化、相互作用
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10F00016
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
伊藤 るり 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ROUSTAN Frederic 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | Japanese-Filipino Children / 混血児 / 人種化 / ビジュアル・カテゴリー / アイデンティティ / バイカルチュラリズム / 視覚的相互作用 |
Research Abstract |
2011(平成23)年度、研究分担者のルスタンは日本における「混血児」人口の人種化の過程と実態を解明するため、「Japanese-Filipino Children(JFC)」を対象として、以下のフィールドワークを行った。 1.「JFC-network」と「日本弁護士連合会」が関与するJFC17名、ならびにその家族等関係者6名:JFCにとって、また彼らの家族や支援者にとって、日本国籍がどのような意味をもつかという問題を中心に聞き取りを行い、考察を行った。また、国際的ネットワークをもつ「Espada」というJFCのラップグループ(4人)を対象とした聞き取りを行った。彼らは日本の学校で差別といじめ問題があって退学し、フィリピン・アメリカ文化を自らのアイデンティティとして選んでいる。彼らがなぜビジュアル文化を重視し、フィリピン・アメリカ文化を選択するかという問題について考察した。2.名古屋のELCC学校の児童だったJFC(6人)を対象として、彼らのライフヒストリーを聞き取って、生きられた経験としてのJFCについて検討した。3.「ハーフプロジェクト」と「mixed roots」という国際児活動家:混血児の社会=政治的カテゴリーについての考察を続け、2010年度収集した文献を参考に日比混血児のカテゴリーの歴史的経緯から混血児一般に調査対象を広げた。4.9月には、フィリピンに渡航し、JFC家庭(8人)に滞在して参与観察を行うと同時に、NGO関係者(MALIGAYA House,COW,BATIS Center)に対してもインタビューを行った。5.その他10月には、アメジアン・スクール・イン・オキナワを研究代表者、伊藤るりとともに訪問し、聞き取り調査を行った。 上記の調査で収集したデータの分析も開始し、9月には空間・社会・文化研究所(パリ大13大学)で行われたシンポジウム「混血化を考える:実践、社会的なアクター、概念(Penser le metissage:pratiques,acteurs,concepts)」にて報告を行った。また現在、フランス「日本人口研究会」が出版予定の書籍のために、収集したデータを使用して執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績概要で示したようにフィールドワークは計画通り順調にすすんでいる。今後はその調査を継続するとともに、調査結果の分析と成果報告に重心を移していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
計画当初より、特に大きな変更の予定や問題点はない。今後も計画どおり進める。2012(平成24)年度は、名古屋のELCC学校とラップグループ「Espada」のメンバーへの調査とフィールドワークを継続する(4月-8月)。また、京都大学で開催される第17回フィリピン研究会全国フォーラム(7月14-15日)に参加予定であるほか、一橋大学でも研究代表者の伊藤るりとともに日本における混血児のワークショップを開催予定である(9月頃予定)。さらに、本プロジェクトの成果の一部は、論文としてフランスの学術雑誌(Hommes et Migrations、Cipango)誌に掲載予定である。
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