2011 Fiscal Year Annual Research Report
金属ポルフィリン錯体触媒による超高エネルギー効率での水分解/酸素発生
Project/Area Number |
10F00037
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
成田 吉徳 九州大学, 先導物質化学研究所, 主幹教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZAHRAN ZakiN. 九州大学, 先導物質化学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 水の酸化 / 卑金属イオン / 過電圧 / 電解触媒 / 水素生成 |
Research Abstract |
水の4電子酸化反応は、植物等の光合成における当該反応の研究から水素エネルギー社会におけるグリーン水素の効率的生産に至るまで、環境に負荷を与えず、かつ理論的に高効率で物理エネルギーを化学エネルギーへと変換する反応として重要であり、世界中で急速に研究展開されている領域である。現在、世界中で競って研究がされている「人工光合成」反応の成否は如何に水を低エネルギーで完全分解できるかにかかっている。この目的を実現するため本年度は次の目標で研究を進め、以下の成果を得た。 1. 多数のアンカー基を有するマンガンポルフィリン二量体修飾電極の作成と触媒的水電解反応: 前年度の研究においてマンガンポルフィリン二量体を導電性電極表面に修飾する事により、マンガンポルフィリン二量体からの迅速な4電子移動による酸化は、中間に生成すると考えられる不安定なマンガン(IV)種の生成を抑制できることから、高い触媒反応活性(TOF〓 100/s)と触媒回転数(TON>百万回)を実現した。しかし、酸性溶液中で15時間程度の連続水分解反応を行うと電極表面から触媒の脱離を起こすことが明らかとなった。そこで本年度は金属酸化物電極表面へのより強固な固定を可能とするように、6個のアンカー基を有するマンガンポルフィリン二量体を合成し、この錯体触媒を電極上に固定した水分解触媒電極を作成した。この電極を同様の陽極酸化条件下で定電位電解反応を行ったところ、24時間連続水分解反応を行っても、電解電流の低下は見られず、電極の吸光度測定からも錯体触媒の脱離や分解による消失は認められず、錯体触媒としては世界最高の活性と耐久性が確認できた。 2. マンガンポルフィリン二量体以外の金属錯体触媒の探索: マンガンポルフィリン以外、コバルト錯体は同等の反応活性を示し、中性水溶液中で最も低い過電圧で水分解/酸素発生を行うことを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多数のアンカー基を有するマンガンポルフィリン二量体を用いることにより、24時間連続水分解を行っても電極表面からの触媒の脱離や分解は見られず、合理的な触媒設計を行った錯体触媒を用いるとこの種の触媒としては異例の高い反応安定性を立証できた。また、金属ポルフィリン以外にも、低過電圧で水の触媒的酸化分解を可能とする新たな金属触媒が見いだされ、今後の研究展開に大きな期待が持てる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で見いだした水の酸化錯体触媒を元にして、貴金属触媒を使用することなく、高い耐久性とエネルギー効率を実現する実用的触媒調製に向けて産業利用の可能性の展開を図る。また、光増感剤と水の酸化触媒との適切な組み合わせにより、人工光合成系構築への展開を図る。
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Research Products
(6 results)