2010 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体ストレスが抗がん剤治療による心筋障害への関与
Project/Area Number |
10F00124
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高島 成二 大阪大学, 医学系研究科, 独立准教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
FU Hai Ying 大阪大学, 医学系研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | 小胞体ストレス / doxorubicin / 心毒性 / XBP1 / 小胞体シャペロン / ケミカルシャベロン |
Research Abstract |
抗がん剤であるdoxorubicinが心毒性を有するため、臨床応用が制限されている。われわれは小胞体ストレス観点から、doxorubicinによる心毒性のメカニズムを解明し、心毒性の軽減法を検討した。 酸化ストレスや遺伝子変異などの刺激が小胞体ストレスを引き起こすといわれている。小胞体ストレスが誘導されると、応答因子であるATF6とXBP1が活性化され、小胞体シャペロンの発現が増加し、小胞体ストレスを軽減する。しかし、これら応答機能が不十分な場合、小胞体ストレス由来細胞アポトーシスが誘導される。 われわれは、心筋細胞にdoxorubicinを添加し、小胞体ストレス応答について調べた。その結果、小胞体ストレス応答因子であるATF6は活性化されるが、XBP1の活性化や小胞体シャペロンの発現は抑制されることが明らかとなった。これらの結果からdoxorubicinが小胞体ストレス応答に対して、特定した経路(XBP1、小胞体シャペロン)を介して、心筋細胞にダメージを与えると考えられる。 また、doxorubicinによる心筋細胞死を阻止するため、われわれは培養心筋細胞にXBP1、小胞体シャペロンの強制発現や小胞体シャペロンの作用を持つケミカルシャペロン(PBA)の投与を行った。その結果、これら三つの方法ともdoxorubicinによる心筋細胞死を抑制できた。 したがって、doxorubicinによる心筋細胞障害に小胞体ストレス-応答が関与していることがわれわれの研究により明らかとなった。さらに、XBP1や小胞体シャペロンの補充が心筋細胞死を防げることから、doxorubicinによる心筋障害の治療に新たなアプローチを提供できた。特にケミカルシャペロン(PBA)が既に尿素サイクル異常症治療薬として使用されているため、doxorubicinによる心毒性の治療薬としての臨床応用が期待できる。
|