2012 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナムにおける廃棄物マネジメント・3R推進事業に係る政策効果分析
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10F00313
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松井 康弘 岡山大学, 廃棄物マネジメント研究センター, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
NGUYEN T.P. 岡山大学, 廃棄物マネジメント研究センター, 外国人特別研究員
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Keywords | 廃棄物 / ごみ組成 / GIS(地理情報システム) / GPS(全地球測位システム) / 収集・運搬 / 温室効果ガス / ライフサイクルアセスメント / 3R |
Research Abstract |
本研究は、ベトナムにおける廃棄物マネジメント-3R推進事業に係る技術・政策の費用・環境負荷を定量的に評価するための基礎情報を収集するとともに、各種技術・政策シナリオの費用対効果等を定量的に評価することを通じ、同国における循環型社会形成に資する情報基盤・評価手法を整備・確立することを目的とする。 本年度の研究成果は以下の通りである。 (1)一般廃棄物の発生・排出に係る実態調査 中部フエ市を対象に、事業系一般廃棄物の発生・排出フローについて、ごみ計量調査・アンケート調査(属性、事業種類・規模、ごみ分別等)を実施して排出実態を把握した。また、研究期間前に実施したフエ市の家庭系一般廃棄物の排出実態調査のデータと併せ、フエ市における家庭系・事業系一般廃棄物の発生量を推定した。 (2)一般廃棄物の収集・運搬に係る実態調査 ベトナムでは、一般廃棄物はハンドカートによる各戸収集及びトラックによる中継輸送が主流となっており、分別収集、コンテナ収集はほとんど見られないのが現状である。本研究では、ベトナム国内の事例として、北部ハノイ市における生ごみの分別収集、中部ダナン市におけるコンテナ収災等の各種収集システムを取り上げ、GPS/GISを援用して作業軌跡・作業時間等の作業実態データを収集し、収集・運搬のコスト・収集効率等を比較した。1tあたりの作業時間で見ると、ダナン市のフォークリフトトラックによるごみ容器収集・運搬の収集効率が0.54人時/tで最も効率的であった。一方、ハノイの生ごみ分別収集は2.83人時/tと1tあたり5倍以上の作業時間を要しており、分別収集が分別効率の大幅な低下を招くことが明らかとなった。 (3)廃棄物マネジメント-3R推進事業に係る政策効果分析 前述したベトナム・フエ市の廃棄物の発生・排出等に係る基礎データ及び環境負荷に係る文献データを用いて、ベトナムの一般廃棄物に対して焼却、発電、堆肥化といった3R技術を導入した場合の環境負荷等を比較評価した。その結果、焼却・発電シナリオの温室効果ガスの排出量、エネルギー消費量が最も小さく、環境負荷面での優位性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ベトナムの一般廃棄物に焦点を当て、その発生・排出、収集・運搬、処理・処分の政策・技術シナリオの政策効果分析を実施することを目的に掲げた。検討に当たっては、特に発生・排出、収集・運搬については国によってその特性が大きく異なるため、ベトナムにおける基礎データの収集が不可欠である。 発生・排出については、ベトナム中部のフエ市において家庭系・事業系一般廃棄物の実態調査を実施し、その発生原単位・組成に関する基礎データを集積することができた。また、収集・運搬については、北部ハノイ市における生ごみの分別収集、中部ダナン市におけるコンテナ収集、南部カントー市における各戸収集等の各種収集システムを取り上げ、GPS/GISを援用して作業軌跡・作業時間等の作業実態データを収集し、様々な収集・運搬システムのコスト・収集効率等を比較した。 本研究を通じて集積した基礎データを用いて、ベトナム・フエ市の廃棄物の性状に基づき、焼却、発電、堆肥化といった3R技術を導入した場合の環境負荷等を比較評価した結果、焼却・発電の温室効果ガスの発生量、エネルギー消費量が最も小さく、環境負荷面での優位性が示唆された。費用面での基礎データが不足したため費用対効果は評価できなかったが、その他の研究目的は概ね達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
発生・排出、収集・運搬については、今後影響要因を考慮した幅広いデータ収集・予測モデル構築が必要と考える。また、廃棄物マネジメントに係る費用面について信頼性の高い基礎データの収集を進め、費用対効果等の政策効果を評価することが必要である。 3Rの推進にあたっては、市民・事業者の協力を得ることが不可欠であり、今後はこれら対象に対する普及啓発事業の実施及びその効果測定が重要な研究課題である。研究代表者は、市民の行動変容を研究テーマとして日本国内で研究成果を積み重ねており、そうした手法をベトナムに適用することで同国の3R推進に貢献できるものと期待される。
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